倫理・ABS・データ登録

倫理関連情報

ヒト由来試料のゲノム研究のためのモデル書式等の改訂について(2024年3月25日)

 「先進ゲノム支援」ではゲノム科学全体の発展のためにデータの公開・共有を積極的に進めることを方針としております。このために、支援で得られたヒト由来試料のゲノムデータは、米国のdbGAPや欧州のEGAに相当する情報・システム研究機構ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)が、同機構国立遺伝学研究所生命情報・DDBJセンターの協力のもと運営するNBDCヒトデータベース制限公開データベースJGA(Japanese Genotype-phenotype Archive, https://humandbs.biosciencedbc.jp/)に、制限公開データとして登録することといたします(注)。登録時点では、支援依頼者の承諾なしに公開・共有されることはありません。その後、論文発表等により支援依頼者からの承諾が得られましたら制限公開に移り、JGAのData Access Committeeであるヒトデータ審査委員会による審査を経て承認された研究者を対象に、登録データの共有を行うことになります。
(データの制限公開日は支援依頼者が指定することが可能です。また、公開前に必ず支援依頼者に確認を行います。)

 JGAに登録するためには、個人情報の保護に関する法律(以下、「個情法」という。)および人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(以下、「研究倫理指針」という。)等に沿った適切な倫理面の対応が必要です。そのため、「先進ゲノム支援」ではヒト由来試料を用いるゲノム解析研究のための「説明文書および同意文書のモデル書式」等を提示するとともに、各研究機関における倫理審査申請時の支援を実施して参りました。2022年4月1日に施行された、改正個情法ならびに改正研究倫理指針を踏まえ改訂を行ったところですが、2024年4月よりNBDCヒトデータベースの運用主体が変更になることから今回一部改訂を行いました。また、AMEDのインフォームド・コンセント説明文書のテンプレートを踏まえて表現を一部修正いたしましたので、以下を利用ください。

(注) 細菌叢自体の解析など、研究倫理指針の対象外となる研究における出力データは、同意内容に準じて非制限公開データ(DRAやDDBJなど)への登録となります。登録先のデータベースの詳細については、採択後、支援担当者あるいは事務局にご相談ください。

 

新規支援申請をするにあたっての事前準備

ヒト由来試料を用いた研究の場合(臨床研究法や倫理指針の適用範囲に含まれ、研究を開始する際に倫理審査委員会による審査が必要な研究課題。ゲノムだけでなくRNA解析や腸内細菌解析なども含まれます)は、以下のPDFファイルをご用意ください。

  1. 倫理審査関連書類チェックシート
  2. 「倫理審査申請書」、および「研究実施計画書」
  3. 「インフォームドコンセントの説明文書」「同意文書」および「同意撤回文書」
  4. 「倫理審査委員会からの承認書」、および「機関の長からの許可書」

※機関からの承認がまだ得られていない場合は、申請に使用する予定の書類をご用意ください。
※倫理関係書類は「最新バージョン」であることを確認した上で提出してください。
※支援依頼内容が含まれる、あるいは追加する予定の「研究計画書」及びその倫理資料一式であることを確認した上で提出してください。

倫理指針対象外(既に学術的な価値が定まり、研究用として広く利用され、かつ、一般に入手可能な試料・情報)に該当する場合は、その入手元情報(市販の培養細胞等の場合は試料を特定するカタログ番号等)を申請システム内で回答頂きます。

よくある質問(FAQ 倫理関連)

 

ABS関連情報

海外由来の植物・動物・微生物などの生物サンプル(遺伝資源)は学術分野での研究材料として広く利用されていますが、生物多様性条約(1993)の発効により、研究利用の際、遺伝資源のアクセスと利益配分(Access and Benefit-Sharing:ABS)への対応(以下、ABS対応)が必要となりました。その生物サンプルの「起源となる国」(=提供国といいます)からのサンプルの取得には各国ごとに定められた法令の遵守と手続きの履行が必要です。近年は、提供国でも法令・規則の整備が進み各国への対応が可能になる一方で、途上国の遺伝資源に対する権利意識の先鋭化により日本の大学や研究機関が難しい対応を迫られる状況が増えています。

遺伝研ABS学術対策チームHPへ
よくある質問とその回答(上記サイト内)

先進ゲノム支援とABS対策

解析試料が外国に由来する場合、生物多様性条約及び名古屋議定書に基づく提供国の法令や各国で定められた手続きに従って取得することが必要です。
大原則として、条約発効日の1993 年12 月29 日以前からその試料の提供国(=その試料の「起源となる国」)の国外で「研究」に利用されている場合、あるいは条約発効日前から「研究用」に日本に持ち込まれていたサンプルやその子孫の場合は対象になりませんが、それ以降のものは対応(確認・調査)が必要です。この対応が行われていない場合、論文発表やデータベース登録ができなくなる恐れがありますので、先進ゲノム支援での解析は行なえません。

先進ゲノム支援では、申請された全課題について、ABS対応が必要なサンプルであるか確認を行います。
申請時は対応ができていなくても構いません(採否に影響は与えません)が、採択された場合でも「ABS対策後に支援開始」との付帯事項付きの採択となります。ABS対策ができない場合は支援をすることができません。
また、採択に至らなかった課題についても、対策が必要であると考えられる試料の場合はアドバイスを行っています。

応募前に、国立遺伝学研究所ABS学術対策チームに相談することも可能です。

サンプルのABS手続きについて、注意点および参考となる資料について

国立遺伝学研究所ABS学術対策チームとともに、サンプルのABS手続きについて確認を進めて頂きます。
必要に応じ、申請者に調査をして頂くこととなります。
以下の1~3の資料がお手元にある場合、有力な情報となりますので情報をご提供ください。
1)条約発効日の1993 年12 月29 日以前からその試料の提供国以外の国ですでに「研究」に利用されている場合、
  その根拠となる文献情報(論文、書籍など)
2)条約発効日前から「研究用」に日本に持ち込まれていたサンプルやその子孫、また日本固有の種
  (アマミノクロウサギ、オオサンショウウオ等)である場合、その根拠となる文献情報(論文、書籍など)
3)そのサンプルの提供国に共同研究者があり、サンプルの入手に伴いMTA (Material Transfer Agreement:
   材料移転同意書)を締結した上で、適法に取得を行った場合、これらの契約や輸出入に関する書類など

特にご注意頂きたい点
ヒト臨床検体 「ヒトも自国の遺伝資源である」という国内法を持つ国(中国、マレーシアなど)もあるため、ヒト臨床検体、ヒト培養細胞の場合は「国籍」にも注意が必要です。
マウス、ラット,
また実験動物業者・公的機関からの購入・分与
日本で飼育・維持されている系統であっても、海外に由来する系統である場合はABSに関する対応が必要な場合があります。
ABS対応状況についての情報を購入・分与元から提供してもらって下さい。
所属ラボで樹立した系統、変異系統(細胞、マウス、ラット等) その株の樹立された場所ではなく、「樹立に用いた大元の系統が」外国由来かどうかが問題となります。(日本で新規に樹立された系統であっても、その材料となった生物が外国の由来である場合は調査や確認が必要となります。)
研究者本人による野外採取 生物サンプル採取に対しては各国の法令があり、事前の許可が必要です。
また、生物サンプルを無断で国外に持ち出すと罪に問われる可能性があります。
スーパー、園芸店、ペットショップ等で購入 ペットショップや市販品の場合、由来が明確でなく、また「ペット」「観賞用」としての利用許可を取得の上、輸入されていたとしても、「研究許可」が取られている訳ではありません。このため、ABSの観点からは研究利用は推奨できません。由来(入手年月日、提供国、入手の手続き、輸入許可、その後の継代の記録等)の情報を購入元にご確認頂くことになります。
サンプルには公的機関などの由来のはっきりした系統の入手をお勧めします。あるいはすでに発表されている論文で同じサンプルが利用されている例があれば、その論文の著者から(ABSに関する対応について確認した上で)入手するなど個別の対策も考えられますので、対策チームまでご相談ください。
研究者間での譲渡・分与 海外の共同研究者から生物サンプルを送付された場合、留学生によって日本に持ち込まれた海外由来の生物サンプルの場合も、生物多様性条約の対象になる可能性があります。海外遺伝資源にアクセスする「前に」、提供国の法令に従った許可証、MTA、また日本の検疫など法令に従った手続きが必要です。
国内の共同研究者から譲渡された場合は、そのサンプルの由来が海外ではないか、さかのぼって調べる必要があります。

 

申請システム内でのABS関連の入力項目

申請システム内では、各支援依頼内容の入力時にABSに関する以下の設問に回答頂きます。

※支援依頼サンプルが複数種類ある場合:「支援項目」選択画面で同じ支援項目を複数「追加」し、それぞれ
 個別に入力してください。
※支援依頼項目が複数ある場合:それぞれの依頼項目において入力欄がありますので、それぞれで入力してください。

*:回答必須項目)
先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム
よくある質問(FAQ ABS関連)

 

「先進ゲノム支援」で得られたデータのデータベース登録に関して

「先進ゲノム支援」では得られたデータの公的データベース登録を行い、研究コミュニティで共有化し、更なる研究の発展に資することを前提としています。データの解析や論文化には時間がかかりますが、データの散逸を防ぎ、しかるべき時期にデータ共有できるように、以下のプロセスで公的データベース登録を速やかに実施しますのでご協力をお願いします。尚、公的データベース登録後も、論文発表までは非公開とすることが可能です。

登録されたデータへの問い合わせ対応や修正・更新等の責任は支援依頼者(申請者)となります。
異動等に伴う連絡先の変更がある場合は忘れずに「申請者ご本人」がDDBJに届け出をしてください。

支援で得られたデータの取り扱いに関して(原則)

支援開始時からデータ公開までの流れは以下のようになります。

01支援開始前:メタデータの送付

  • 支援依頼者から支援担当者宛に試料を送付する際、併せてメタデータ(データベース登録に必要な解析試料に付随する各種情報)を送付して頂きます。
  • メタデータの雛形は、試料送付に先立って支援担当者から支援依頼者宛に送付します。
  • メタデータの送付がない場合、データ取得の支援を進めることができません。
02データ取得後:データ登録、データ提供

  • 支援内容のデータ取得終了後、得られた配列データ等は支援担当者の補助のもとDDBJが運用する DRA(DDBJ Sequence Read Archive) などに登録します(注)。
    支援依頼者へのデータの提供は、原則として支援依頼者がDDBJ等にアクセスし、ダウンロードすることで行います。ただし、ファイルの容量が大きい場合やサンプル数が多数の場合は、別途ハードディスク等でのデータ送付が可能です。その際は支援担当者とご相談ください。
    また、ヒト由来試料データの場合も支援担当者とご相談下さい。
  • ヒト由来試料データの場合は、JST/NBDCによる承認を経てJGA (Japanese Genotype-phenotype Archive) に登録します。
  • 登録の際に公開期日を設定(後日エンバーゴ可能です。申請者ご本人が手続きしてください。)
03データ公開

  • データは登録の際に公開期日を設定する事ができます。すぐに公開したくない場合は、支援担当者にご指示ください。指示がなかった場合は、データはすぐに公開されます。
  • 設定した公開期日が近づくと、DDBJ等から支援依頼者(申請者)宛に「データを公開するか、再度公開期日を延長するか」の問い合わせがあります。この問い合わせに対しては、支援依頼者側での対処をお願いいたします。
  • データ公開後の各種問い合わせに対しても支援依頼者(申請者)側で対処お願いいたします。そのため、異動等に伴う連絡先の変更がある場合は忘れずに申請者ご本人がDDBJに届け出をしてください。
    連絡が届かなかったことによる意図せぬデータ公開に対して、支援側は責任を負いかねます。

DDBJへの塩基配列データの登録方法

DDBJのアカウント取得、塩基配列データの登録までをまとめたファイルは以下からご参照ください。
(2022年度拡大班会議:遺伝研 谷澤先生によるランチョンセミナー資料)

DDBJ への塩基配列データの登録について

以下のようなファイルが含まれています(一部をスクリーンショット)。

参考資料(動画など)
●TogoTV(アカウント取得から BioProject/BioSample/DRA の登録まで全てをカバー)
https://togotv.dbcls.jp/20150617.html
https://togotv.dbcls.jp/20210730.html
●DRA登録ハンドブック
https://www.ddbj.nig.ac.jp/dra/submission.html#how-to-submit-dra-data
●よくある質問
https://www.ddbj.nig.ac.jp/faq/ja/index.html