ゲノムひろば2003 in 京都

主催:文部科学省科学研究費特定領域研究ゲノム4領域(旧特定領域)

後援:京都市、京都府教育委員会、京都市教育委員会

ゲノムセミナー 講師・タイトル・プロフィール

講演:「ゲノム研究の歩みとこれから -私の歩んだ遺伝学の道とその将来」

堀田 凱樹
(国立遺伝学研究所 所長)

略歴

昭和38年東大医学部卒業、昭和43年同大学院博士課程修了、医学博士。米国カリフォルニア工科大学博士研究員、東大理学部助教授、同教授を経て、平成9年より国立遺伝学研究所長。松永賞、井上学術賞、日本遺伝学会木原賞、武田医学賞、紫綬褒章受賞。動物行動の遺伝学的研究を世界に先駆けて開始し、脳神経系の遺伝子的解析、特に神経回路形成の遺伝子機構やニューロンとグリア細胞の分化スイッチ遺伝子などの分子生物学研究に携わってきた。

要旨

私が研究を始めた1960年代はまだクローニングもない古典の時代だった。生物の設計図である遺伝子を研究すれば、神秘的に見える脳の解明にもつながると期待してショウジョウバエの実験を始めたが、たかだか30年余の間に分子技術の革命が起こり、ゲノム時代になってしまった。今ではハエで解明された原則の多くがヒトにまで当てはまることが示されている。講演では遺伝情報の「普遍性」があるからこそゲノム全解読が重要である事を示したい。

堀田
研究報告:「生活習慣病のゲノム解析研究」

加藤 規弘
(国立国際医療センター研究所 部長)

略歴

昭和63年3月、東京大学医学部を卒業。Oxford大学大学院臨床医学系博士課程に留学後、モデル動物及びヒトでの動脈硬化危険因子に関する分子遺伝学的研究に従事し、平成12年10月より現職に就任、現在に至る。

要旨

高血圧などの生活習慣病は遺伝要因と環境要因とが組み合わさって発症し進展する。ヒトの容姿が多種多様であるように、30億の塩基配列からなる遺伝暗号も個人間で少なからず異なっており、そうしたバリエーション(遺伝子多型) のなかに病気を起こすしくみや薬物副作用のおこり易さを規定するものも存在すると考えられている。このように個々の遺伝子多型情報に基づいて、医療を“個別化”することがゲノム解析研究の目的である。

加藤
研究報告:「メダカの学校:シーボルトからゲノムまで」

堀 寛
(名古屋大学大学院理学研究科 教授)

略歴

昭和46年 広島大学医学部卒業. 専門は分子進化遺伝学。とくに現在は脊椎動物(メダカ)の表現形質の分子進化機構。著書「岩波講座分子生物学3「生物の歴史」(共著)等。またメダカのホームページ(medakafish homepage) を主催。

要旨

メダカは身近な日本のサカナですが、これを西洋に紹介したのは、江戸時代、長崎にきた博物学者のシーボルトでした。明治時代になるとすぐにメダカは研究に用いられ、メンデルの法則が脊椎動物で最初に確認されたのもメダカです。最近はメダカは脊椎動物のカラダ作りの秘密をとき、ヒトの病気のモデルになりつつあります。それにはメダカの全ゲノムを知ることが必須で、これが今、どのように進められているのか、を紹介します。

堀
研究報告:「生物の部品をコンピュータで調べる」

位田 隆一
(京都大学大学院法学研究科 教授)

略歴

1948年生まれ。京大法学部卒業。D.E.A.(フランス)。京都大学法学部、岡山大学を経て、86年より京都大学教授。文部科学省研究振興局科学官。1998-2002年ユネスコ国際生命倫理委員会委員長、総合科学技術会議生命倫理専門調査会委員。国際法及び生命倫理に関する著作多数。

要旨

ヒトの全DNA塩基配列の解析が完了し、いまやヒトゲノム研究は遺伝子の探索とその機能の分析を通じて臨床研究・応用を具体的に目指す段階に移っている。そこでは、原則として個人と遺伝情報が連結した形で研究を進めることが重要である。そのため、資料の採集、蓄積・加工、使用、保管のそれぞれの段階で、個人遺伝情報の機密性保護を中心として、インフォームド・コンセントや差別禁止の問題など、十分な倫理的考慮が必要である。

位田
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