ゲノムひろば2004 in 福岡

主催:文部科学省科学研究費特定領域研究ゲノム4領域(旧特定領域)

後援:福岡県、福岡市、福岡県教育委員会、福岡市教育委員会

ゲノムセミナー 講師・タイトル・プロフィール

講演:「ゲノム研究の歩みとこれから」

榊 佳之
(理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター センター長)

略歴

九州大学教授、東京大学教授を経て、現在理化学研究所ゲノム科学総合研究センターセンター長を務める。ヒトゲノムにおける転移因子L1の発見、家族性アミロイドーシス、アルツハイマー病など病気の遺伝子の解析を手掛けてきた。日本のヒトゲノム計画の代表として国際プロジェクトに参画し、ヒト21番染色体の全解読に成功、さらにヒトゲノム全解読に大きく貢献した。最近はヒトとチンパンジーとの比較解析でヒトの進化についての新しい領域を拓きつつある。2002年よりヒトゲノム研究の国際組織HUGOの会長。

要旨

ゲノムは生物の基本設計図であり、そこには複雑だが巧みな生物、生命の仕組みが書き込まれている。この生命の仕組みを解明する第一歩はゲノムDNAの配列決定である。本講演ではまず、ヒトゲノムの全配列決定の国際プロジェクトの歴史と成果を私の経験を交えて紹介する。この全配列から約32000種の遺伝子の存在や、300万~500万の一塩基多型(SNPs)の存在など重要な情報が明らかになった。今これらの情報をもとに様々な研究が展開している。本講演の後半では、SNPと病気との関係、複雑な生命現象の根底にある遺伝子間のネットワーク、ヒトのヒトらしさに対応する遺伝子(タイプ)の探索など、ヒトゲノムの最前線を紹介する。

榊 佳之
研究報告:「野生マウスを利用したゲノム機能解析」

城石 俊彦
(情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 系統生物研究センター センター長・教授)

略歴

マウス突然変異体を利用して形態形成を遺伝学とゲノム科学で解析している。また、マウス遺伝子多型に基づいた新しい実験用系統の開発を行っている。1998年より理研GSC動物ゲノム機能情報研究グループ・プロジェクトディレクターを兼任。

要旨

生物・医学分野に広く利用されている標準的なマウス系統は、主に西ヨーロッパ産亜種マウス由来のゲノムを持っている。一方、アジアには、それらと大きな遺伝的距離を有する別亜種が分布する。国立遺伝学研究所では、アジア産亜種の野生マウスから近交系統を樹立してきた。これらの系統群は、標準的近交系統にはないユニークな表現形質を示す。現在、ゲノム多型と表現多型を結びつけるための新世代実験系統も開発しており、野生マウスを利用した体系的なゲノム機能解析の将来性について紹介する。

城石 俊彦
研究報告:「ゲノム情報解読の文法を求めて」

中井 謙太
(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 教授)

略歴

1963年大阪生まれ。大学では主に物理学を学ぶが、大学院からマイナーだったバイオインフォマティクスを専攻、まもなくヒトゲノム計画が大ブレークして環境が一変。京大、基生研、阪大などを転々とし、1999年からは花の白金台生活。

要旨

映画や小説では髪の毛や蚊の吸った血から人間や恐竜を復活させていますが、一つ一つの細胞内DNAには生物の全情報が書き込まれているので、これらの設定も原理的には十分可能です。でも、A/T/G/Cの4種類の文字が並ぶだけのDNAでどうしてそんなに複雑な情報を表現できるのでしょう?実はその秘密はまだよくわかっておらず、人類は未知の言語で書かれた分厚い書物を手渡されたような状態です。そこで研究者たちがコンピュータを使って、例外だらけの文法を発見したり、辞書作りをしたりしている努力の一端をご紹介します。

中井 謙太
研究報告:「体質からみた生活習慣病の予防」

加藤 規弘
(国立国際医療センター 研究所 部長)

略歴

1988年3月、東京大学医学部を卒業。Oxford大学大学院臨床医学系博士課程に留学後、モデル動物及びヒトでの動脈硬化危険因子に関する分子遺伝学的研究に従事し、2000年10月より現職に就任、現在に至る。

要旨

ヒトは何万年という時間をかけて、飢餓などの厳しい自然環境に適応し生存に有利な体質を選択してきた。しかし最近の生活習慣の急激な変容で運動不足、カロリー摂取過多となると、倹約志向性の体質は余剰カロリーを体内に蓄積して生活習慣病の遺伝的背景となってしまう。そこで我々は、生活習慣を効果的に是正し治療や予防に役立てるために、素因遺伝子を調べてきた。本研究報告では、高血圧、糖尿病などを中心に遺伝子解析研究の現状を概説する。

加藤 規弘
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