[班員による高度化論文公開]難治性血液がんに対する新しいエピゲノム治療の有効性と作用機序を解明―次世代技術と臨床研究の融合により日本発創薬のメカニズムを解明!―

東京大学大学院新領域創成科学研究科の山岸誠准教授、鈴木穣教授、内丸薫教授らによる研究グループは、エピゲノム異常に対する新しい阻害薬が多くのがん抑制遺伝子の発現を回復させ、治療の難しい血液がん患者に対して持続的な治療効果を示す分子メカニズムの解明に成功しました。
研究チームは、日本発の新薬であるメチル化ヒストン阻害薬バレメトスタットの治療を受けた成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)患者の体内でどのような変化が起こるかを、遺伝子発現とエピゲノムを同時に解析できる高精度の解析技術を組み合わせて詳細に検討しました。抑制されていた多くのがん抑制遺伝子の発現は治療開始後から徐々に正常化し、DNAに変異が多数蓄積した高悪性度のがん細胞の増殖を長期間抑制することを初めて観測しました。また長期治療後に発生しやすい薬剤耐性化のメカニズムも明らかにしました。
本成果は、日本発の創薬の成功を示しただけでなく、エピゲノム異常の修復が難治がんに有効である根拠とともに将来の課題に対する解決の糸口を示した点において、社会的意義が非常に大きいといえます。今後、同様の異常を持つ多くのがんに対する新しい治療法への応用が期待されます。
本成果は、英国科学雑誌『Nature』2024年2月21日版に掲載されました。

プレスリリース: https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10804.html

Makoto Yamagishi, Yuta Kuze, Seiichiro Kobayashi, Makoto Nakashima, Satoko Morishima, Toyotaka Kawamata, Junya Makiyama, Kako Suzuki, Masahide Seki, Kazumi Abe, Kiyomi Imamura, Eri Watanabe, Kazumi Tsuchiya, Isao Yasumatsu, Gensuke Takayama, Yoshiyuki Hizukuri, Kazumi Ito, Yukihiro Taira, Yasuhito Nannya, Arinobu Tojo, Toshiki Watanabe, Shinji Tsutsumi, Yutaka Suzuki, Kaoru Uchimaru, Mechanisms of action and resistance in histone methylation-targeted therapy, Nature (2024) DOI:10.1038/s41586-024-07103-x
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岩手大学農学部の伊藤菊一教授らの研究グループは、発熱植物ザゼンソウを対象にしたトランスオミクス解析により、本植物の発熱組織でその発現が特異的に賦活化されている一連の遺伝子と代謝系の全貌を解明しました。特に、ザゼンソウの発熱組織で最も高い発現量を示す遺伝子(selenium-binding protein 1/methanethiol oxidase)は、ザゼンソウの熱制御システムに密接に関わるだけではなく、本植物が発熱時に悪臭を発しない理由を説明できる重要な遺伝子であることが明らかになりました。本研究成果は、外気温の変動にも関わらずその花器温度をほぼ一定に保つことができるザゼンソウの温度調節メカニズムの核心に迫るもので、ザゼンソウの発熱現象の分子基盤の理解に留まらず、地球規模の気候変動下における農作物の安定的な生産にも繋がるものです。本研究成果は、2024年2月6日(米国東部時間)に国際誌Plant Physiologyの電子版で公開されました。

プレスリリース: https://www.iwate-u.ac.jp/cat-research/2024/02/006099.html

Haruka Tanimoto, Yui Umekawa, Hideyuki Takahashi, Kota Goto, Kikukatsu Ito.
Gene expression and metabolite levels converge in the thermogenic spadix of skunk cabbage.
Plant Physiology (2024). doi:10.1093/plphys/kiae059
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岡山大学大学院環境生命科学研究科の石井智也大学院生(当時)、齋藤晶大学院生(当時)、学術研究院環境生命自然科学学域(農)能年義輝教授、九州大学大学院医学研究院の林哲也教授らの共同研究グループは、ブドウの重要病害である根頭がんしゅ病を抑制できる拮抗細菌が、頭部を欠いたファージ尾部様粒子によって根頭がんしゅ病の病原細菌を溶菌することで防除能を発揮する仕組みを明らかにしました。本成果は日本時間1月18日午前9時、国際微生物生態学会の科学雑誌「The ISME Journal」にオンライン掲載されます。
根頭がんしゅ病は土壌に生息する植物病原細菌によって引き起こされ、化学農薬での防除が難しい病害です。このような病害には拮抗微生物(生物農薬)が有効です。岡山県農林水産総合センターではブドウ根頭がんしゅ病を極めて強力に抑制する拮抗細菌を特定していましたが、今回その作用機序が明らかになったことで、拮抗細菌の生物農薬としての利用や、さらに有望な菌株の単離に道が拓け、世界のブドウやワイン生産の安定化への貢献が期待されます。

プレスリリース: https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1181.html

Tomoya Ishii, Natsuki Tsuchida, Niarsi Merry Hemelda, Kirara Saito, Jiyuan Bao, Megumi Watanabe, Atsushi Toyoda, Takehiro Matsubara, Mayuko Sato, Kiminori Toyooka, Nobuaki Ishihama, Ken Shirasu, Hidenori Matsui, Kazuhiro Toyoda, Yuki Ichinose, Tetsuya Hayashi, Akira Kawaguchi, Yoshiteru Noutoshi. Rhizoviticin is an alphaproteobacterial tailocin that mediates biocontrol of grapevine crown gall disease. The ISME Journal 18, (2024). doi:10.1093/ismejo/wrad003
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動物と共生する微生物は宿主の成長に大きな影響を与えます。しかし、多くの共生微生物種がいる中でどの種が重要な役割を担うかはよくわかっていません。また、共生細菌の役割と比べ、共生酵母の役割については不明な点が多く残されています。
 そこで、牟禮あゆみ 生命科学研究科博士課程学生、服部佑佳子 同助教、上村匡 同教授らの研究グループは、野生のショウジョウバエが共生する微生物叢を解析しました。自然界でショウジョウバエは、酵母や細菌によって発酵した果物を食べていますが、これらの微生物が存在することで幼虫が成長できることが知られています。そこで、発酵した果物から単離した微生物種を様々な組み合わせで無菌の幼虫に与えて、食べた幼虫が蛹まで成長できるかを解析しました。その結果、果物の発酵段階によって異なる微生物種が単独、あるいは協力しながら幼虫の成長に中心的な役割を担うことを突き止めました。さらに、特定の酵母種による栄養素供給機構の一端を明らかにしました。本研究の成果は、今後、より多数の種で構成される哺乳類の微生物叢の効果と作用機構を理解する上での足がかりとなることが期待されます。
 本研究成果は、2023年12月27日に、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載されました。

プレスリリース: https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-12-28-0

Ayumi Mure, Yuki Sugiura, Rae Maeda, Kohei Honda, Nozomu Sakurai, Yuuki Takahashi, Masayoshi Watada, Toshihiko Katoh, Aina Gotoh, Yasuhiro Gotoh, Itsuki Taniguchi, Keiji Nakamura, Tetsuya Hayashi, Takane Katayama, Tadashi Uemura, Yukako Hattori. Identification of key yeast species and microbe–microbe interactions impacting larval growth of Drosophila in the wild. eLife 12, (2023). doi:10.7554/elife.90148.3
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公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(理事長:本庶佑)は、先端医療研究センター血液・腫瘍研究部(部長:井上大地)による「造血と白血病を制御する未知の機構の解明」についての研究成果が、2023 年 12 月 16 日 (日本時間)付の国際学術誌『Nature ommunications』に掲載されましたので、お知らせします。 本研究では、当機構先端医療研究センター血液・腫瘍研究部の井上大地部長、Muran Xiao 研究員、野村真樹研究員、西村耕太郎主任研究員が、国立遺伝学研究所(当時)の近藤伸二博士、名古屋大学の日野原邦彦特任准教授、メモリアルスローンケタリング癌センターのオマー・アブデルワハブ医師らとの共同研究により、BRD9 の発現制御とクロマチン制御をつなぐ新しいパスウェイが、造血幹細胞の維持・分化ならびに血液がんの発症・進展に重要な役割を果たしており、病態理解だけでなく治療応用につながる成果を明らかにしました。

プレスリリース: https://www.fbri-kobe.org/upload/view.php?news_id=1251&type=main

Muran Xiao, Shinji Kondo, Masaki Nomura, Shinichiro Kato, Koutarou Nishimura, Weijia Zang, Yifan Zhang, Tomohiro Akashi, Aaron Viny, Tsukasa Shigehiro, Tomokatsu Ikawa, Hiromi Yamazaki, Miki Fukumoto, Atsushi Tanaka, Yasutaka Hayashi, Yui Koike, Yumi Aoyama, Hiromi Ito, Hiroyoshi Nishikawa, Toshio Kitamura, Akinori Kanai, Akihiko Yokoyama, Tohru Fujiwara, Susumu Goyama, Hideki Noguchi, Stanley C. Lee, Atsushi Toyoda, Kunihiko Hinohara, Omar Abdel-Wahab, Daichi Inoue. BRD9 determines the cell fate of hematopoietic stem cells by regulating chromatin state. Nature Communications 14, (2023). doi:10.1038/s41467-023-44081-6
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北海道大学大学院理学研究院の和多和宏教授らの研究グループは、自然科学研究機構生命創成探究センター及び生理学研究所の郷 康広教授との共同研究として、歌鳥(鳴禽類スズメ目)で近縁種ではあるが異なった歌パターンをもつキンカチョウとカノコスズメを親として、その異種間交雑したハイブリッドのヒナの発声学習の個体差に着目した研究を行い、生得的な発声運動特性が個体ごとに異なり、それに基づいた発声学習バイアスを持つこと、脳内の興奮性投射神経細胞の遺伝子発現特性が、発声学習バイアスの個体差と機能相関を持つことを明らかにしました。
本研究成果は、2024年1月10日(水)公開のProceedings of the National Academy of Sciences誌(PNAS, 米国科学アカデミー紀要)に掲載されました。

プレスリリース: https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240112_pr4.pdf

Noriyuki Toji, Azusa Sawai, Hongdi Wang, Yu Ji, Rintaro Sugioka, Yasuhiro Go, Kazuhiro Wada, A predisposed motor bias shapes individuality in vocal learning, Proc Natl Acad Sci U S A, 121(3): e2308837121 (2024) DOI: 10.1073/pnas.2308837121
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東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木絢子准教授、鈴木穣教授、国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野の河野隆志分野長、筑波大学医学医療系診断病理学の野口雅之教授(研究当時)らからなる研究チームは、発生早期の肺腫瘍についての詳細なゲノム解析を行いました。

長鎖DNAシークエンスや空間オミクス解析などの最新の解析技術を用いたゲノム解析を行い、ドライバーがん遺伝子変異と呼ばれる重要な遺伝子の変化が、最も初期の上皮内がんの段階において既に発生していることを見出しました。そして、ゲノムDNA全体のメチル化の低下やコピー数変化がそれに続いて積み重なることで、上皮内がんから悪性度を増した浸潤がんに進展していくというメカニズムが明らかになりました。また、やや進展した上皮内がんの段階で、腫瘍細胞は初めて免疫細胞からの本格的な攻撃にさらされることが分かり、腫瘍細胞はそれに対する防御メカニズムを発揮し、その結果として肺組織内には様々な形態の変化が生じると示唆されます。
このような詳細な早期肺がんの解析は世界で初めて行われたものです。発がん早期に生じる遺伝子、タンパク質、組織形態の変化を詳細に明らかにすることは、将来的ながんの早期発見や有効な治療、効果的な予防につながるものと期待されます。

本成果は、「Nature Communications」に2023年12月15日に掲載されました。

プレスリリース: https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10700.html

Yasuhiko Haga, Yoshitaka Sakamoto, Keiko Kajiya, Hitomi Kawai, Miho Oka, Noriko Motoi, Masayuki Shirasawa, Masaya Yotsukura, Shun-Ichi Watanabe, Miyuki Arai, Junko Zenkoh, Kouya Shiraishi, Masahide Seki, Akinori Kanai, Yuichi Shiraishi, Yasushi Yatabe, Daisuke Matsubara, Yutaka Suzuki*, Masayuki Noguchi, Takashi Kohno*, Ayako Suzuki*, Whole-genome sequencing reveals the molecular implications of the stepwise progression of lung adenocarcinoma, Nature Communications (2023) DOI:10.1038/s41467-023-43732-y
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大阪大学蛋白質研究所の伊藤将助教、藤田侑里香特任研究員(常勤)、古郡麻子准教授、篠原彰教授、近畿大学農学部の松嵜健一郎講師、国立遺伝学研究所先端ゲノミクス推進センターの豊田敦特任教授らの研究グループは、DNA組換えが活発に起こる哺乳類の生殖細胞において、DNA組換えに必要なタンパク質がDNA上の無関係な場所に結合することを防ぐ仕組みを新たに明らかにしました。
私達は、生殖器官内の生殖細胞において、父親と母親から受け継いだDNAを組換えによりシャッフルすることで、新たな遺伝情報を持つ精子や卵子を獲得します。DNA組換えの鍵を握るRAD51タンパク質は、DNAに結合することでDNA組換えをスタートさせます。これまで、RAD51タンパク質がどのように組換えが起こる場所のみを狙ってDNAに結合できるのかについては解明されていませんでした。
今回、伊藤将助教らの研究グループは、マウスをモデルとして用いることで、哺乳類の生殖細胞が、組換えが起こらない場所に結合したRAD51タンパク質を積極的に外すことで、組換えが起こる場所のみにRAD51タンパク質を結合させる仕組みを明らかにしました。この仕組みが破綻すると、DNA組換えがうまく行かなくなり、結果的に精子ができなくなります。本研究成果は、哺乳類が精子や卵子を安定的に産生する仕組みや、生命が多様性を生み出す仕組みの理解に繋がり、将来的には生殖補助医療や不妊治療への発展が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Nature Communications」に、10月27日23時(日本時間)にオンライン掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20231027.pdf

Masaru Ito, Asako Furukohri, Kenichiro Matsuzaki, Yurika Fujita, Atsushi Toyoda & Akira Shinohara, FIGNL1 AAA+ ATPase remodels RAD51 and DMC1 filaments in pre-meiotic DNA replication and meiotic recombination, Nature Communications, 14, Article number: 6857 (2023) DOI: 10.1038/s41467-023-42576-w
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国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター粒子線医学開発分野/東病院放射線治療科医員 影山俊一郎、レジデント 大吉秀和らの研究グループは、慶應義塾大学薬学部分子腫瘍薬学講座 柴田淳史教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 鈴木穣教授らとの共同研究で、放射線治療前後の食道がん患者さんの組織を、1細胞解析、空間的トランスクリプトーム解析等を用いた時空間解析を行い、これまで不明な点が多かった放射線治療によるがん免疫応答のメカニズムを空間、細胞、遺伝子単位で明らかにしました。
本研究により、放射線治療と併用することで治療効果が期待できる標的細胞、遺伝子、併用タイミング等の重要な情報を得ることできました。特に放射線治療中に増加したPD-L1、IDO1、SIRPA等の免疫抑制遺伝子を強く発現するマクロファージは重要な役割を担っていると予測され、本研究で見いだされた免疫細胞や遺伝子を標的にした治療法を検証していくことで、食道がんに対する有効な治療法の開発が期待できます。
本成果は2023年12月13日、Science Advances 誌に掲載されました。

プレスリリース: https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2023/1214/index.html

Hidekazu Oyoshi, Junyan Du, Shunsuke A Sakai, Riu Yamashita, Masayuki Okumura, Atsushi Motegi, Hidehiro Hojo, Masaki Nakamura, Hidenari Hirata, Hironori Sunakawa, Daisuke Kotani, Tomonori Yano, Takashi Kojima, Yuka Nakamura, Motohiro Kojima, Ayako Suzuki, Junko Zenkoh, Katsuya Tsuchihara, Tetsuo Akimoto, Atsushi Shibata, Yutaka Suzuki and Shun-Ichiro Kageyama, Comprehensive single cell analysis demonstrates radiotherapy-induced infiltration of macrophages expressing immunosuppressive genes into tumour in oesophageal squamous cell carcinoma, Science Advances (2023) DOI: 10.1126/sciadv.adh9069
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東京大学大学院新領域創成科学研究科の関真秀特任准教授と鈴木穣教授、京都大学大学院理学研究科の松下智直教授と野田口理孝教授(兼:名古屋大学生物機能利用開発研究センター 特任教授)、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の吉田聡子教授、筑波大学生命環境系の壽崎拓哉准教授、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの黒谷賢一特任准教授らの研究グループは、ゲノムDNAから遺伝子を読み取る開始位置である転写開始点(TSS)を網羅的に決定するTSS-seq2法を開発しました。さらに、コシオガマ、ベンサミアナタバコ、ミヤコグサ、ハクサンハタザオの4種類の植物について、TSS情報の収集を行いました。
TSSの決定は、RNAの正確な構造や、TSSの近辺に存在して遺伝子の機能を調節する重要な領域であるプロモーター領域を同定するために重要です。正確性の高い転写開始点検出法は、必要なRNAの量が多く、プロトコルが複雑であるなど、簡単には実施できない手法が主流でした。今回、先行研究により開発されたTSS-seq(注1)を改良・簡略化することで、TSS-seq2を開発しました。TSS-seq2は既存の方法よりも特異的に転写開始点を検出でき、5ナノグラムと少量のRNAからでも実施できます。
今回開発した方法は、様々な生物種や組織でのmRNAの正確な構造の同定や遺伝子の制御の研究、特に、希少な細胞種や微小な組織などの少量のサンプルの解析への応用が期待されます。また、今回収集した植物のTSS情報は、これらの植物種の研究の基盤データとなることが期待されます。
 本成果は、Nucleic Acids Researchに2023年11月22日に掲載されました。

プレスリリース: https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10636.html

Masahide Seki, Yuta Kuze, Xiang Zhang, Ken-ichi Kurotani, Michitaka Notaguchi, Haruki Nishio, Hiroshi Kudoh, Takuya Suzaki, Satoko Yoshida, Sumio Sugano, Tomonao Matsushita, Yutaka Suzuki, An improved method for the highly specific detection of transcription start sites, Nucleic Acids Research (2023) DOI:10.1093/nar/gkad1116
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金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構の後藤典子教授らの共同研究グループは,乳がん再発の原因細胞の取り出しに成功しました。
乳がんは,日本や欧米など世界的に女性が罹患する最も多いがんです。最新の統計では,生涯のうちに日本人女性の9人に1人が乳がんに罹患することが見込まれ,さらに,罹患者数のみならず死亡数も増加傾向にあり,大きな問題になっています。診断技術や分子標的薬の進歩などにより,治癒を見込める乳がん症例が増えてきている一方で,完治したはずの乳がんが,数年~10数年後に転移再発して不幸な転帰をたどる症例が一定数あることが,死亡数増加の要因の一つとなっています。
手術前に,抗がん剤や分子標的薬による全身治療を行う「術前全身治療」後,手術切除した乳腺組織内にがん細胞が残存する症例では,転移再発しやすいことが知られています。この転移再発を起こすがん細胞が,抗がん剤などの治療に対して抵抗性を示すメカニズムは不明です。このメカニズムが分かれば,転移再発を減らして乳がんによる死亡数を減少させられると考えられます。
本研究では,幹細胞の性質を持つ,いわゆる「がん幹細胞」の細胞集団の中に,抗がん剤などの治療に対して最も耐性を示す亜集団を見いだして,取り出すことに成功しました。さらに,古くより心不全の治療に用いられてきた強心配糖体を用いることにより,この治療抵抗性のがん幹細胞亜集団を死滅させられることを見いだしました。本知見は,強心配糖体を組み合わせた術前化学療法を行うことにより,乳がん再発を予防できる可能性を示し,乳がんの撲滅に貢献できることが期待されます。
本研究成果は,2023年11月15日12時(米国東部標準時間)に国際学術誌『Journal of Clinical Investigation』のオンライン版に掲載されました。

プレスリリース: https://www.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/231116_re.pdf

Mengjiao Li, Tatsunori Nishimura, Yasuto Takeuchi, Tsunaki Hongu, Yuming Wang, Daisuke Shiokawa, Kang Wang, Haruka Hirose, Asako Sasahara, Masao Yano, Satoko Ishikawa, Masafumi Inokuchi, Tetsuo Ota, Masahiko Tanabe, Kei-ichiro Tada, Tetsu Akiyama, Xi Cheng, Chia-Chi Liu, Toshinari Yamashita, Sumio Sugano, Yutaro Uchida, Tomoki Chiba, Hiroshi Asahara, Masahiro Nakagawa, Shinya Sato, Yohei Miyagi, Teppei Shimamura, Luis Augusto Eijy Nagai, Akinori Kanai, Manami Katoh, Seitaro Nomura, Ryuichiro Nakato, Yutaka Suzuki, Arinobu Tojo, Dominic C. Voon, Seishi Ogawa, Koji Okamoto, Theodoros Foukakis, Noriko Gotoh, FXYD3 functionally demarcates an ancestral breast cancer stem cell subpopulation with features of drug-tolerant persisters, Journal of Clinical Investigation (2023) DOI:10.1172/JCI166666
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自然環境において微生物は多様な種の組み合わせによる「微生物群集」として存在しています。微生物群集の構成は環境に依存しており、特に「環境温度」はその構成に重要な影響を与えます。しかしながら、環境温度と微生物群集の繋がりについて、具体的な法則や関係性はほとんど解明されていませんでした。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ゲノム進化研究室の黒川真臣特任研究員および黒川顕教授らのグループは、環境中に存在する微生物全体が持つ遺伝情報と環境温度の間に特有の数理法則が成り立つことを発見ました。そして、この法則を利用してメタゲノム配列より取得した遺伝情報から環境温度を予測する技術「Metagenomic Thermometer」を開発しました。
Metagenomic Thermometer を用いて、人工的に構築した多様な温度の温泉河川において、微生物群集のメタゲノム解析から環境温度を高精度に予測することに成功しました。さらに、公共データを利用して、温泉河川以外の環境、特にヒト腸内環境にも Metagenomic Thermometer が適用可能であることを示しました。
本成果は、微生物群集の構成についての理解を深めるとともに、ヒト深部体温の推定、体温に応じて定着しやすい生菌製剤やプロバイオティクスの設計への応用、さらには気候変動に伴う微生物群集の変化の予測などへの応用が期待できます。 本研究成果は、国際科学雑誌「DNA Research」に2023年11月7日(日本時間)に掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20231122.pdf

Masaomi Kurokawa, Koichi Higashi, Keisuke Yoshida, Tomohiko Sato, Shigenori Maruyama, Hiroshi Mori, and Ken Kurokawa, Metagenomic Thermometer, DNA Research (2023) 30, dsad024 DOI:10.1093/dnares/dsad024
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東京大学の按田瑞恵特任助教、山内駿大学院生、コセンティーノ サルヴァトーレ特任助教、岩崎渉教授と、理化学研究所の坂本光央専任研究員、大熊盛也室長、高島昌子ユニットリーダー(研究当時)、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授の共同研究チームは、多様な環境に生息する2門2科4属5種のバクテリアが、生物の基本構成要素の一つであるタンパク質の合成に必須なリボソームRNA(rRNA)遺伝子をプラスミドだけに持つことを発見しました。また、今回解析したバクテリアのうちPersicobacteraceae科に属するバクテリアは、染色体からrRNA遺伝子を失った状態でも数億年にわたって絶滅しなかったことを明らかにしました。
本研究の発見は、「生存に必須な遺伝子を長期間にわたって安定して子孫に伝えるためには染色体上で受け渡す必要がある」とする生物学における定説を否定するものです。今後、物質生産といった工業応用や薬剤耐性菌の出現などで重要な役割を果たすプラスミドの新たな基本的性質の解明や、プラスミドを安定的に維持する技術開発への貢献が期待されます。
本研究成果は、2023年11月14日に英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

プレスリリース: https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10606.html

Mizue Anda, Shun Yamanouchi, Salvatore Cosentino, Mitsuo Sakamoto, Moriya Ohkuma, Masako Takashima, Atsushi Toyoda, and Wataru Iwasaki, Bacteria can maintain rRNA operons solely on plasmids for hundreds of millions of years, Nature Communications. (2023) 14, 7232  DOI: 10.1038/s41467-023-42681-w
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山梨大学 大学院総合研究部 医学域 基礎医学系 薬理学講座及び山梨 GLIA センター小泉修一教授及び齋藤光象助教の研究チームは、これまで知られていなかった、稀少な難治性神経変性疾患である「アレキサンダー病」の病態保護作用に関与する細胞を発見しました。 アレキサンダー病は、本邦の患者数約 50 名の超稀少な難治性神経変性疾患であり、根本的な治療法は確立されていません。アレキサンダー病はグリア細胞の一種である「アストロサイト」特異的遺伝子 GFAP 遺伝子の変異が原因で発症します。しかしながら、同一の GFAP 変異を有していてもアレキサンダー病の発症年齢、重症度、臨床経過には幅広い多様性があることが知られていました。また、ほぼ無症候や軽症での経過中に急な病状進行を見る症例もありGFAP 変異以外もしくはアストロサイト以外の疾患修飾因子の存在が疑われていました。
アレキサンダー病は一次性アストロサイト病であるため、これまでの研究はアストロサイトに注目した研究が殆どでした。しかし今回、もう一つのグリア細胞であるミクログリアが本疾患の重要な修飾細胞であり、病態に大きく影響していることが明らかとなりました。これらは、ミクログリアへの介入が、将来に全く新しいアレキサンダー病の治療戦略になる可能性を示唆するものです。本研究成果は英国オックスフォード大学出版局が刊行する国際医学誌「BRAIN」に2023年11月13日午前9時(日本時間)に掲載されました。

プレスリリース:
https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2023/11/20231113pr.pdf

Kozo Saito, Eiji Shigetomi, Youich Shinozaki, Kenji Kobayashi, Bijay Parajuli, Yuto Kubota, Kent Sakai, Miho Miyakawa, Hiroshi Horiuchi, Junichi Nabekura and Schuichi Koizumi, Microglia sense astrocyte dysfunction and prevent disease progression in an Alexander disease model. BRAIN (2023). doi: 10.1093/brain/awad358
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東京大学 大学院総合文化研究科の晝間 敬 准教授と、同 大学院新領域創成科学研究科の岩崎 渉 教授、同 大学院農学生命研究科の田野井 慶太朗 教授、大森 良弘 准教授、北海道大学 大学院理学研究院の南 篤志 准教授、理化学研究所 環境資源科学研究センターの岡本 昌憲 チームリーダー、薬用植物資源研究センターの佐藤 豊三 客員研究員、奈良先端科学技術大学院大学の西條 雄介 教授らによる研究グループは、植物に定着する内生糸状菌(カビ)が持つ1つの菌二次代謝物生合成遺伝子クラスターが共生から寄生への多彩かつ連続的な菌の感染戦略を支えていることを明らかにしました。
今後、本遺伝子クラスターの制御機構をさらに突き詰め、クラスターの活性化を制御する技術を開発することで、寄生菌の悪い行動だけを抑えつつ、共生菌の効用を最適化する技術の開発にもつながっていくことが期待されます。
本研究成果は、2023年9月6日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

プレスリリース:
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20230906/index.html

Hiruma, K., Aoki, S., Takino, J. et al. A fungal sesquiterpene biosynthesis gene cluster critical for mutualist-pathogen transition in Colletotrichum tofieldiae. Nat Commun 14, 5288 (2023). doi: 10.1038/s41467-023-40867-w
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国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 (大阪府茨木市、理事長:中村祐輔) 創薬デザイン研究センター・細胞核輸送ダイナミクスプロジェクト・岡正啓プロジェクトリーダーらの研究グループは、急性白血病細胞で見られるヌクレオポリン融合遺伝子産物が形成する核内の相分離構造体の新しい機能を明らかにしました。本研究は今後さらなる白血病メカニズムの解明や創薬へ繋がる成果であると期待されます。なお、本研究は、九州大学生体防御医学研究所・大川恭行教授グループ、東京大学定量生命科学研究所・中戸隆一郎准教授グループなどと共同で行われました。
本研究成果は2023年7月29日に『Cell Reports』に発表されました。

プレスリリース:
https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/files/1013f78a174323b04a174eaf799ee85d058a0eea.pdf

Masahiro Oka, Mayumi Otani, Yoichi Miyamoto, Rieko Oshima, Jun Adachi, Takeshi Tomonaga, Munehiro Asally, Yuya Nagaoka, Kaori Tanaka, Atsushi Toyoda, Kazuki Ichikawa, Shinichi Morishita, Kyoichi Isono, Haruhiko Koseki, Ryuichiro Nakato, Yasuyuki Ohkawa, Yoshihiro Yoneda. Phase-separated nuclear bodies of nucleoporin fusions promote condensation of MLL1/CRM1 and rearrangement of 3D genome structure. Cell Reports 42, 112884(2023). doi:10.1016/j.celrep.2023.112884
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東京大学大学院農学生命科学研究科獣医解剖学研究室の金井克晃教授率いる研究チームは、AMH-treck トランスジェニック(Tg)マウス系統を用いて、胎子精巣からセルトリ細胞をジフテリア毒素により実験的に除去することで、精巣上皮から顆粒層細胞を含む卵巣皮質が形成され、精巣間質では卵巣特有の内莢膜細胞が出現することを発見した。この精巣から卵巣への性転換は、セルトリ細胞から分泌されるパラクライン因子の供給停止によるものである。今までは、未分化な性腺の雌雄共通の前駆細胞から、オス型のセルトリ細胞、メス型の顆粒層細胞(ステロイドホルモン産生細胞は、オス型のライディッヒ細胞とメス型の内莢膜細胞)が分化し、精巣・卵巣へと発達すると考えられていた。本成果により、オス・メスで別々の前駆細胞から精巣・卵巣が発達し、セルトリ細胞由来のFGF9がメスの卵巣前駆細胞の出現を抑制していることも新たに判明した。胎子期の精巣で卵巣前駆細胞が維持されている事実は、マウスだけでなく、ヒトや家畜の性分化異常症での卵巣前駆細胞の性的2型の破綻の一原因として考えられ、ほ乳類の生殖腺の機能障害の病因の深い理解に貢献する。
本成果は2023年7月17日にDevelopment誌に掲載されました。

プレスリリース: https://release.nikkei.co.jp/attach/658550/02_202307041438.pdf

Kenya Imaimatsu, Ryuji Hiramatsu, Ayako Tomita, Hirotsugu Itabashi, Yoshiakira Kanai. Partial male-to-female reprogramming of mouse fetal testis by sertoli cell ablation. Development (2023). doi:10.1242/dev.201660
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ヒトのゲノムは、主に「ユークロマチン」「ヘテロクロマチン」の2つの領域に分類できるとされています。これまで長い間、頻繁に遺伝情報の読み出しが行われるユークロマチンは「ほどけて」いる一方、遺伝情報の読み出しが抑えられているヘテロクロマチンは凝縮して「塊」を形成している、と考えられてきました。

今回、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ゲノムダイナミクス研究室の前島一博 教授、飯田史織 総研大生(学振特別研究員 DC2)、島添將誠 総研大生、田村佐知子 テクニカルスタッフ、井手聖 助教は、Trends in Cell Biology誌に、この定説を覆すOpinion Paperを発表しました。この論文では、最近報告された超解像クロマチンイメージング、クロマチンのアクセシビリティをDNA消化酵素に対する感受性でゲノムワイドに調べた解析、さらには、密度勾配遠心法を用いたヌクレオソーム密度のゲノムワイドな解析をもとに、高等真核細胞ではユークロマチンも直径100-300 nm程度の凝縮した「塊 (ドメイン)」を形成していること、凝縮したドメインがクロマチンの基本構造であることを提唱しています。さらに、凝縮したドメインが存在することによって実現する転写制御のモデルや、分裂期染色体でのドメインの役割についても議論しています。本論文は2023年6月27日にTrends in Cell Biology誌に掲載されました。

プレスリリース: https://www.eurekalert.org/news-releases/993484

Kazuhiro Maeshima, Shiori Iida, Masa A. Shimazoe, Sachiko Tamura, Satoru Ide. Is euchromatin really open in the cell?. Trends in Cell Biology (2023). doi: 10.1016/j.tcb.2023.05.007
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東海国立大学機構 岐阜大学応用生物科学部山根京子准教授および学部四年生山本祥平氏(研究当時)、東京工業大学生命理工学院伊藤武彦教授および田中裕之研究員、学部四年生堀立樹氏(研究当時)、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所豊田敦特任教授、東京都立大学矢野健太郎教授の研究グループは、世界に先駆けてワサビのハプロタイプレベルでの高精度な全染色体参照ゲノム解読に成功しました。
今回明らかとなったゲノム配列は、遺伝や進化などの基礎研究、品種改良など農業分野、さらには在来や野生ワサビの保全のための情報整備など、多くの分野での活用が期待されます。
本研究成果は、日本時間2023年7月11日にNature姉妹誌Scientific Dataのオンライン版で発表されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20230711.pdf

Hiroyuki Tanaka, Tatsuki Hori, Shohei Yamamoto, Atsushi Toyoda, Kentaro Yano, Kyoko Yamane, Takehiko Itoh, Haplotype-resolved, chromosomal-level assembly of wasabi (Eutrema japonicum) genome, Scientific Data (2023) DOI: 10.1038/s41597-023-02356-z
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日本女子大学の山本荷葉子学術研究員(兼学振特別研究員)ら及び国立環境研究所の松﨑令高度技能専門員らは、国立遺伝学研究所、東京大学、コンケン大学、カラシーン大学の研究者との共同研究により、バイセクシュアル種への進化を探るためにタイ国産株のボルボックス・アフリカヌスの全ゲノム解析に取り組みました。
これまでボルボックスでは、雌雄が遺伝的に異なる雌雄異株種からバイセクシュアル種に進化するためには、メスの性染色体にオス特異的遺伝子が取り込まれることが必要と考えられており、性染色体は雌雄で異なっていて、各々メスまたはオスに特異的な遺伝子を保有するものと解釈されていました。しかし、タイ国産株のバイセクシュアル種では、メスの性染色体に相当する部分が全て欠落している一方で、オスの性染色体に相当する部分がほとんどそのまま残存していました。このことは、性染色体にはメスとオスを区別する以外の未解明の機能が存在することを示唆し、今後の研究が期待されます。
本研究成果は国際科学雑誌「iScience」に2023年6月16日に掲載されました。

プレスリリース: https://www.nies.go.jp/whatsnew/2023/20230622/20230622-2.html

Kayoko Yamamoto, Ryo Matsuzaki, Wuttipong Mahakham, Wirawan Heman, Hiroyuki Sekimoto, Masanobu Kawachi, Yohei Minakuchi, Atsushi Toyoda, Hisayoshi Nozaki. Expanded male sex-determining region conserved during the evolution of homothallism in the green alga Volvox. iScience (2023) 26, 106893 DOI:10.1016/j.isci.2023.106893
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大阪大学大学院理学研究科 中川拓郎准教授らの研究グループは、九州大学大学院医学研究院 林哲也教授、久留米大学医学部 小椋義俊教授、千葉大学真菌医学研究センター 高橋弘喜准教授との共同研究により、真核生物に広く存在するSrr1とアルギニンメチル化酵素Skb1が、染色体異常を誘発することを世界で初めて明らかにしました。
セントロメア領域での染色体異常は、がん細胞などで高頻度に観察されます。しかし、その詳細な分子メカニズムについては解明されていませんでした。今回、中川准教授らの研究グループは、分裂酵母に突然変異を導入し、染色体異常の発生頻度が減少した変異株を単離し、その株の変異部位を次世代シーケンスで特定することにより、Srr1とSkb1遺伝子がセントロメア領域での染色体異常を誘発することを明らかにしました。本研究成果より、染色体異常が原因で起きる遺伝性疾患やゲノム進化のメカニズム解明が進むことが期待されます。 
本研究成果は、英国科学誌「Communications Biology」に、2023年(金)5月26日18時(日本時間)に公開されました。

プレスリリース:
https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/topics/12169/
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230526_1

Piyusha Mongia, Naoko Toyofuku, Ziyi Pan, Ran Xu, Yakumo Kinoshita, Keitaro Oki, Hiroki Takahashi, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Takuro Nakagawa. Fission yeast Srr1 and Skb1 promote isochromosome formation at the centromere. Communications Biology 6, (2023). doi:10.1038/s42003-023-04925-9
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情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 野崎慎 大学院生 (現 ハーバード大研究員)、井手聖助教、前島一博教授のグループ、東光一助教、黒川顕教授のグループは、理化学研究所 新海創也 上級研究員、大浪修一チームリーダーと共同で、生きた細胞内をナノメートルレベルで可視化できる超解像蛍光顕微鏡を用い、細胞の中での DNA の動きを観察・解析し、ユークロマチンの挙動を詳細に調べました。
その結果、ユークロマチンにおいても、DNA が不規則に凝縮した「塊」を形成し、そのなかで DNA が揺らいでいることを発見しました。このことは、ユークロマチンにおいては DNA がほどけている、という従来の定説を覆す発見で、不規則に凝縮した「塊」が、生きた細胞内におけるユークロマチンの基本構造であることがわかりました。また、ユークロマチンにおける DNA の塊は、放射線などによる DNA の損傷への耐性にも貢献すると考えられます。
本研究の結果によって、生命の設計図である DNA の遺伝情報がどのように維持され、どのように読み出されるのかについての理解が進むとともに、遺伝情報の保護、読み出し方の変化によって起きるさまざまな細胞の異常や関連疾患の理解につながることが期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌「Science Advances」に2023年4月6日(日本時間)に掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2023/04/research-highlights_ja/pr20230406.html

Tadasu Nozaki*, Soya Shinkai*, Satoru Ide*, Koichi Higashi*, Sachiko Tamura, Masa A. Shimazoe, Masaki Nakagawa, Yutaka Suzuki, Yasushi Okada, Masaki Sasai, Shuichi Onami, Ken Kurokawa, Shiori Iida, Kazuhiro Maeshima *co-first authors
Condensed but liquid-like domain organization of active chromatin regions in living human cells
Science Advances (2023) 9, eadf1488 DOI:10.1126/sciadv.adf1488
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がんは宿主個体の肝臓にさまざまな悪影響を及ぼします。しかし、その全貌は未だ明らかではありません。特に、肝臓の空間的遺伝子発現パターン-肝臓には、栄養や酸素の勾配に応じて空間的に遺伝子発現を変化させるしくみが存在します-にどのような影響が生じるかは不明でした。京都大学医生物学研究所Alexis Vandenbon 准教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科 鈴木穣教授、東北大学加齢医学研究所 河岡慎平准教授 (兼務:京都大学医生物学研究所) の研究チームは、京都大学医学部附属病院、岐阜大学大学院医学系研究科、熊本大学大学院生命科学研究部と共同で、1細胞トランスクリプトームと空間トランスクリプトームという二つの手法を組み合わせることで、がんが宿主個体の肝臓の空間的遺伝子発現パターンを撹乱することを発見しました。がんによる肝臓への悪影響の新たな側面を明らかにする研究であり、悪影響を適切に制御するための重要な基盤となることが期待されます。本研究成果は 2023年1月24日に英国の学術誌である Communications Biology電子版に掲載されました。

プレスリリース: https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20230131_1.pdf

Alexis Vandenbon, Rin Mizuno, Riyo Konishi, Masaya Onishi, Kyoko Masuda, Yuka Kobayashi, Hiroshi Kawamoto, Ayako Suzuki, Chenfeng He, Yuki Nakamura, Kosuke Kawaguchi, Masakazu Toi, Masahito Shimizu, Yasuhito Tanaka, Yutaka Suzuki, Shinpei Kawaoka, Murine breast cancers disorganize the liver transcriptome in a zonated manner, Communications Biology (2023) DOI:10.1038/s42003-023-04479-w
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今回、かずさDNA研究所 白澤 健太主任研究員、近畿大学 細川 宗孝教授、京都大学 安井 康夫助教、国立遺伝学研究所 豊田 敦特任教授らの研究グループは、「鷹の爪」の全ゲノムを解読し、12本の染色体のDNA配列(合計30億塩基対)を高精度に決定しました。そして、「鷹の爪」以外の14系統のトウガラシのゲノム情報と比較して、染色体構造の違いや塩基配列の違いを多数明らかにしました。これらの情報から、「鷹の爪」が日本で広がった経緯が明らかになるかもしれません。さらに、「鷹の爪」がもつ強い抗ウイルス活性の利用や、多様なトウガラシを生み出すための品種改良が進むと期待されます。
本研究成果は国際学術雑誌 DNA Research において、2022年12月25日(日)にオンライン公開されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20221225.pdf

Kenta Shirasawa, Munetaka Hosokawa, Yasuo Yasui, Atsushi Toyoda, and Sachiko Isobe, Chromosome-scale genome assembly of a Japanese chili pepper landrace, Capsicum annuum ‘Takanotsume’ DNA Research (2022) DOI:10.1093/dnares/dsac052
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長浜バイオ大学の大森義裕教授・今鉄男特任助教(現在:ウィーン大学シニアリサーチフェロー)の研究グループは、国立遺伝学研究所(豊田敦特任教授)、データサイエンス共同利用基盤施設(野口英樹特任教授、福多賢太郎研究員)、愛知県水産試験場弥富指導所、ウィーン大学および米国国立衛生研究所(NIH)と共同でフナを原種とするキンギョの眼球の網膜組織から約2万3千個の細胞を分離し、それぞれの細胞に発現する数万個の遺伝子発現など(シングルセルRNA-seq解析とシングルセルATAC-seq解析)を測定することに成功しました。キンギョの網膜において、全遺伝子が同時に倍加する進化上まれな現象である全ゲノム重複によって倍加した遺伝子のうち、306ペアの遺伝子対の発現が進化し新たな発現パターンを獲得したことを明らかにしました。これは全ゲノム重複後の1400万年という比較的短い時間に細胞レベルで遺伝子の発現パターンの進化が起こることを具体的に示した世界初の報告となります。また、全ゲノム重複後に重複した遺伝子対の発現が重複前の片方のゲノムに偏っているという「非対称サブゲノム進化」がシングルセルレベルで進行していることが証明されました。これらの発見は、現在も謎の多い全ゲノム重複という現象の全体像の解明に向けた重要な一歩となります。
本研究成果は、2022年12月26日(月)19:00(日本時間)に国際科学誌「Communications Biology」(オンライン)に掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2022/12/research-highlights_ja/pr20221226.html

Tetsuo Kon, Kentaro Fukuta, Zelin Chen, Koto Kon-Nanjo, Kota Suzuki, Masakazu Ishikawa, Hikari Tanaka, Shawn M. Burgess, Hideki Noguchi, Atsushi Toyoda, Yoshihiro Omori, Single-cell transcriptomics of the goldfish retina reveals genetic divergence in the asymmetrically evolved subgenomes after allotetraploidization, Communications Biology (2022) 5, 1404 DOI:10.1038/s42003-022-04351-3
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日本女子大学 化学生命科学科 関本弘之教授、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 豊田敦特任教授,藤山秋佐夫特命教授、および金沢大学 疾患モデル総合研究センター研究基盤支援施設 西山智明助教らの共同研究チームは、接合藻類のヒメミカヅキモの雌雄にあたる 2 種の接合型のゲノムを解読して比較することにより、ヒメミカヅキモの接合型を決定する遺伝子を特定しました。
さらに、本グループが確立したヒメミカヅキモのゲノム編集技術を用いて、この遺伝子が接合型を決定する遺伝子の本体であることを示しました。
この遺伝子は、陸上植物の有性生殖に重要な遺伝子から接合型決定遺伝子に進化したと考えられます。また、ヒメミカヅキモは陸上植物と最も近縁な藻類の一つであり、本研究は、陸上植物が祖先的な藻類からどのように進化して陸上に適応したのか、その謎の解明への貢献が期待されます。
本研究の成果は、英国の科学雑誌「New Phytologist」のオンライン版に12月19日に掲載されました。

プレスリリース: https://www.jwu.ac.jp/unv/news/2022/h8ccod00000019wj-att/20221220_news.pdf

Hiroyuki Sekimoto, Ayumi Komiya, Natsumi Tsuyuki, Junko Kawai, Naho Kanda, Ryo Ootsuki, Yutaka Suzuki, Atsushi Toyoda, AsaoFujiyama, Masahiro Kasahara, Jun Abe, Yuki Tsuchikane, Tomoaki Nishiyama, A divergent RWP-RK transcription factor determines mating type in heterothallic Closterium, New Phytologist (2022) DOI: 10.1111/nph.18662
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北海道大学大学院理学研究院の黒岩麻里教授らの研究グループは、Y染色体とSry遺伝子をもたないアマミトゲネズミ(Tokudaia osimensis)という哺乳類種を対象に、世界で初めてSry遺伝子なしにオスが決定される仕組みを解明しました。また、アマミトゲネズミでは常染色体が新しい性染色体へと進化していることが明らかになりました。本研究成果は、日本時間2022年11月29日公開のThe Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS, 米国科学アカデミー紀要) 誌に掲載されました。

プレスリリース: https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221129_pr.pdf

Miho Terao, Yuya Ogawa, Shuji Takada, Rei Kajitani, Miki Okuno, Yuta Mochimaru, Kentaro Matsuoka, Takehiko Itoh, Atsushi Toyoda, Tomohiro Kono, Takamichi Jogahara, Shusei Mizushima, and Asato Kuroiwa, Turnover of mammal sex chromosomes in the Sry-deficient Amami spiny rat is due to male-specific upregulation of Sox9. PNAS (2022) 119, e2211574119 DOI:10.1073/pnas.2211574119
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名古屋大学大学院医学系研究科システム生物学分野の小嶋泰弘 特任講師、島村徹平 教授、分子細胞免疫学の西川博嘉 教授と、三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学の永春圭規 博士課程学生(現市立四日市病院)、三重大学医学部附属病院輸血・細胞治療部の大石晃嗣 病院教授(部長)らの研究グループは、小嶋特任講師が開発した深層生成モデルとスプライシング数理モデルの融合により、単細胞レベルの RNA 遺伝子発現の網羅的解析(scRNA-seq)から細胞分化の方向性の“ゆらぎ”を定量的に解析する手法と、大石教授らが開発した包括的リンパ球培養法を用いて、抗体産生に関わるヒト B リンパ球と I 型インターフェロンを分泌する形質細胞様樹状細胞(pDC)が共通の前駆細胞由来であること、この細胞分岐点で細胞分化の方向性が大きくゆらぐこと、接着分子である LFA-1 が pDC 方向への分化(のゆらぎ)に関連すること等を発見しました。さらにゆらぎのメカニズムを解明するため、新学術領域研究「先進ゲノム支援」により、B/pDC前駆細胞領域のオープンクロマチン領域を解析し(ATAC-seq)、B、pDC分化に関連する転写因子のaccessibilityが両方とも高いことを明らかにしました。
本研究成果は、2022年8月30日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

プレスリリース:
https://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat680/post-61.html
https://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/files/bb594cc8f32742b025f469655d673941.pdf

Keiki Nagaharu, Yasuhiro Kojima, Haruka Hirose, Kodai Minoura, Kunihiko Hinohara, Hirohito Minami, Yuki Kageyama, Yuka Sugimoto, Masahiro Masuya, Shigeru Nii, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Isao Tawara, Teppei Shimamura, Naoyuki Katayama, Hiroyoshi Nishikawa, Kohshi Ohishi, A bifurcation concept for B-lymphoid/plasmacytoid dendritic cells with largely fluctuating transcriptome dynamics. Cell Reports (2022) DOI: https://doi.org/10.1016/j.celrep.2022.111260
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カイダコの殻は冬になると日本海側の各地に打ち上がることが知られており、ビーチでみられる貝殻のなかでも特に珍重されているものです。この貝殻はタコの仲間が作ったものであることが知られています。
島根大学生物資源科学部附属センター海洋生物科学部門(隠岐臨海実験所)の吉田真明 准教授と和歌山工業高等専門学校のスティアマルガ デフィン 准教授らの研究グループは今回カイダコ類の1種であるアオイガイの全ゲノム配列を世界で初めて解読しました。
アオイガイのゲノム中にある 26,433 個の遺伝子の中で、44 個の遺伝子が貝殻形成に使われていることがわかりました。さらに、カイダコが底生生活から浮遊生活に移行する過程で起こったゲノム中の遺伝子の変化を見つけることができました。これにより、進化の過程で貝を失ったはずのタコが、どのようにして再び貝殻を作れるようになったのか?という進化上の大きな謎を解明することに一歩近づきました。
本共同研究は、2022 年10月26日(水)に英文論文誌 Genome Biology and Evolutionにオンライン版が掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20221026.pdf

M. Yoshida, K. Hirota, J. Imoto, M. Okuno, H. Tanaka, R. Kajitani, A. Toyoda, T. Itoh, K. Ikeo, T. Sasaki, D. H E Setiamarga, Gene Recruitments and Dismissals in the Argonaut Genome Provide Insights into Pelagic Lifestyle Adaptation and Shell-like Eggcase Reacquisition. Genome Biology and Evolution (2022) DOI: https://doi.org/10.1093/gbe/evac140
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農研機構をはじめとする共同研究グループは、タマネギにおいて、染色体全体のDNA多型を効率的に分析する方法の開発を目指しました。まず、タマネギにある8本の染色体について、各々に圴一に配置され、染色体全体をカバーしたDNAマーカーセットを作成しました。次に、次世代シーケンサーを利用し、これらのマーカーセットの全てのDNA多型を一度にまとめて分析する手法を試みました。その結果、染色体全体のDNA多型を効率的に分析することに成功しました。この分析手法で得られた個体間のDNA多型と形質を照らし合わせれば、DNAマーカーセットの中から目的の形質と関連したDNAマーカーを特定でき、選抜マーカーとして利用できるようになります。この技術は、タマネギでの選抜マーカーの開発を飛躍的に進め、育種の効率化および新品種の早期育成に貢献することが期待できます。本研究成果は、2022年8月26日に、国際学術誌「DNA Research」に掲載されました。

Daisuke Sekine, Satoshi Oku, Tsukasa Nunome, Hideki Hirakawa, Mai Tsujimura, Toru Terachi, Atsushi Toyoda, Masayoshi Shigyo, Shusei Sato, Hikaru Tsukazaki, Development of a genome-wide marker design workflow for onions and its application in target amplicon sequencing-based genotyping. DNA Research, Volume 29, Issue 5 (2022) DOI: https://doi.org/10.1093/dnares/dsac020
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岡﨑友輔 化学研究所助教、中野伸一 生態学研究センター教授、豊田敦 国立遺伝学研究所特任教授、玉木秀幸 産業技術総合研究所副研究部門長らの共同研究グループは、従来法では捉えられなかった環境中の細菌ゲノムにおけるわずかな変異を塩基多型・構造多型の両側面から網羅的に検出可能なメタゲノム解析法を確立し、琵琶湖に生息する細菌群集の多様性の実態を高解像度で明らかにしました。さらにその結果の解析から、ウイルス感染への抵抗性、および細菌群集の集団サイズがゲノムの多様化をつかさどる主要因であることを示しました。「似て非なる」ゲノムの比較解析から生物多様性の源泉に迫った本研究は、環境中の微生物の多様性を高解像度に捉える研究の必要性を示し、微生物の進化と生態をとりまく理解を知見と手法の両側面から新たな段階へと導く成果といえます。本研究成果は、2022年8月8日に、国際学術誌「mSystems」にオンライン掲載されました。

プレスリリース: https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2022-08-10-0

Yusuke Okazaki, Shin-ichi Nakano, Atsushi Toyoda, Hideyuki Tamaki, Long-Read-Resolved, Ecosystem-Wide Exploration of Nucleotide and Structural Microdiversity of Lake Bacterioplankton Genomes. mSystems (2022) DOI: https://doi.org/10.1128/msystems.00433-22
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基礎生物学研究所 進化発生研究部門の千頭康彦研究員(元・総合研究大学院大学 大学院生)と新美輝幸教授、久留米大学の奥野未来助教、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授、東京工業大学の伊藤武彦教授からなる研究グループは、昆虫進化の初期に出現したシミ類に着目してdoublesexの機能を解析し、その祖先状態を推定しました。その結果、シミ類マダラシミのdoublesexは雌雄で異なるスプライシング調節を受けますが、メスの形態形成への機能をもたないことが明らかになりました。一方、マダラシミのdoublesexは幾つかの遺伝子の発現をメスで促進することが分かりました。これらの結果は、doublesexは昆虫進化の初期段階で既に雌雄で異なるスプライシング調節を受け、メスに特異な幾つかの遺伝子の発現を促進する機能をもち、そして完全変態類出現後にメスの形態形成に対する機能を獲得した可能性が高いことを示唆しています。では、doublesexのどのような変化がメスの形態形成への機能と関連したのでしょうか。本研究では、メスの形態形成に対する機能をもつ種のDoublesexタンパク質に特有なアミノ酸配列を発見しました。この結果から、本研究は、アミノ酸配列の変更によってdoublesexは新機能を獲得したとする仮説を提唱しました。本研究成果は、有翅昆虫類と昆虫類以外の節足動物との間にあった知見のギャップを埋めることに成功し、doublesexの特殊な進化史を新たに推定するものです。本成果は、日本時間2022年7月13日付で「Molecular Biology and Evolution」誌に掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20220713.pdf

Yasuhiko Chikami, Miki Okuno, Atsushi Toyoda, Takehiko Itoh, Teruyuki Niimi, Evolutionary history of sexual differentiation mechanism in insects, Molecular Biology and Evolution 39, msac145 (2022) DOI:10.1093/molbev/msac145
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筑波大学 生存ダイナミクス研究センター島田 裕子助教らの研究グループは、キイロショウジョウバエ Drosophila melanogasterを宿主とする寄生蜂ニホンアソバラコマユバチAsobara japonicaを用いて、寄生蜂の生存戦略を支えている分子生物学的基盤を明らかにすることを目指しており、今回、その全ゲノム配列の決定と全遺伝子予測、さらに、遺伝子ノックダウン法の開発に成功しました。
ニホンアソバラコマユバチは、キイロショウジョウバエのみならず、多くのショウジョウバエ属昆虫を宿主とすることが知られています。その中には、現在ヨーロッパを中心に果物の害虫として深刻な問題となっているオウトウショウジョウバエDrosophila suzukiiも含まれます。本研究成果は、ショウジョウバエの害虫種に対する農薬の開発シーズの創出にもつながると考えられます。本成果はDNA Research誌に2022年6月10日に掲載され、筑波大学よりプレスリリースされました。

プレスリリース: https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20220614140000.pdf

Takumi Kamiyama, Yuko Shimada-Niwa, Hiroyuki Tanaka, Minami Katayama, Takayoshi Kuwabara, Hitoha Mori, Akari Kunihisa, Takehiko Itoh, Atsushi Toyoda, Ryusuke Niwa, Whole-genome sequencing analysis and protocol for RNA interference of the endoparasitoid wasp Asobara japonica, DNA Res., dsac019 (2022) DOI: 10.1093/dnares/dsac019
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東京大学 大学院農学生命科学研究科 附属水産実験所カビール アハマド氏、家田 梨櫻氏、細谷 将助教らの研究グループは、トラフグをふくむ12種の近縁種を研究材料とし、遺伝的連鎖解析、遺伝的関連解析、全ゲノム配列構築、ゲノム多型解析といったさまざまな手法をつかって、性染色体の置き換わりについて調べました。その結果、3つの近縁種で染色体の置き換えが最近おきたこと、そして、その置き換えがゲノム中を動き回る性決定遺伝子によって引きおこされていたことが明らかとなりました。本研究成果は、2022年6月3日にProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌にオンライン掲載されました。

プレスリリース: https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20220603-1.html

Ahammad Kabir, Risa Ieda, Sho Hosoya, Daigaku Fujikawa, Kazufumi Atsumi, Shota Tajima, Aoi Nozawa, Takashi Koyama, Shotaro Hirase, Osamu Nakamura, Mitsutaka Kadota, Osamu Nishimura, Shigehiro Kuraku, Yasukazu Nakamura, Hisato Kobayashi, Atsushi Toyoda, Satoshi Tasumi, Kiyoshi Kikuchi, Repeated translocation of a supergene underlying rapid sex chromosome turnover in Takifugu pufferfish, PNAS 119 (23) e2121469119 (2022) DOI: 10.1073/pnas.2121469119
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横浜市立大学大学院医学研究科 分子生物学の鈴木秀文助教、阿部竜太共同研究員(研究当時:医学部学生)、髙橋秀尚教授の研究グループは、メディエーター複合体のサブユニット MED26 と Little elongation complex (LEC) が、2つの核内凝集体Histone locus body(HLB)と Cajal body を会合させることで、新規の RNA ポリメラーゼ II (Pol II)の一時停止を引き起こし、ヒストン遺伝子の発現を制御することを明らかにしました。本研究成果は、英科学誌 Nature Communications に掲載されました。(日本時間2022年5月25日18時)

プレスリリース:
https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/d0md7n000000fqov-att/YCUrelease_takahashi_202205.pdf

Hidefumi Suzuki, Ryota Abe, Miho Shimada, Tomonori Hirose, Hiroko Hirose, Keisuke Noguchi, Yoko Ike, Nanami Yasui, Kazuki Furugori, Yuki Yamaguchi, Atsushi Toyoda, Yutaka Suzuki, Tatsuro Yamamoto, Noriko Saitoh, Shigeo Sato, Chieri Tomomori-Sato, Ronald C. Conaway, Joan W. Conaway, Hidehisa Takahashi, The 3′ Pol II pausing at replication-dependent histone genes is regulated by Mediator through Cajal bodies’ association with histone locus bodies, Nature Communications (2022) DOI:10.1038/s41467-022-30632-w
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筑波大学生命環境系下田臨海実験センター谷口 俊介准教授らの研究グループは、ハリサンショウウニの全ゲノム情報を解読するとともに、公的に利用できる遺伝子のデータベース TrBase を作成し公開しました。これにより、ハリサンショウウニが、ゲノム情報の整備されたモデル生物として、より多くの研究者や教育者に利用可能となり、ウニの発生や成長を司る遺伝子機能の解析などの基礎研究のみならず、水産などの応用研究や教育分野での活用などに貢献することが期待されます。本研究成果は、2022 年 5 月 20 日にDevelopment Growth & Differentiation誌に掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20220520.pdf

Kinjo S, Kiyomoto M, Suzuki H, Yamamoto T, Ikeo K, Yaguchi S., ITrBase: a genome and transcriptome database of Temnopleurus reevesii, Development Growth & Differentiation (2022) DOI: 10.1111/dgd.12780
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東京大学大学院農学生命科学研究科の中里一星大学院生と有村慎一准教授らのグループは、モデル植物(注1)シロイヌナズナのミトコンドリアゲノム約36万7千塩基対のうち狙った1塩基対のみを、細胞当たり数十から百個ほどあるミトコンドリアゲノムコピーの全てで置換することに成功しました。以前、有村准教授らのグループが開発した植物ミトコンドリアゲノム安定改変法(DNA切断タンパク質を用いてミトコンドリアゲノムの狙った箇所を切る方法)では、狙った箇所を中心に数百から数千塩基対の長さの欠損が生じ、また遺伝子の並び順が変わるなど、ゲノム構造の変化を引き起こしてしまうことが問題になっていました。今回報告する標的一塩基置換法では、このようなゲノム構造の変化は生じず、従来法と比べて精緻なゲノム改変を達成することができました。本研究は、これまで不可能だったミトコンドリアゲノムの人為改変を利用した作物品種改良の基盤技術になることが期待されます。本成果は、2022年5月13日 に米国の国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されました。

プレスリリース: https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20220516-1.html

Issei Nakazato, Miki Okuno, Chang Zhou, Takehiko Itoh, Nobuhiro Tsutsumi, Mizuki Takenaka, and Shin-ichi Arimura, Targeted base editing in the mitochondrial genome of Arabidopsis thaliana, PNAS 119 (20) e2121177119  doi: 10.1073/pnas.2121177119
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京都大学大学院農学研究科 神川龍馬准教授、筑波大学計算科学計算センター 中山卓郎助教、国立科学博物館動物研究部 谷藤吾朗研究主幹、国立遺伝学研究所 中村保一教授らの共同研究グループは、地球全体の光合成の約20%に貢献すると言われる珪藻の中で、光合成を止めた種の全ゲノム解読に成功しました。この種は光合成をしない代わりに環境中に溶存する栄養分を吸収して生育していますが、その詳細なメカニズムはわかっていませんでした。本研究では全ゲノム解読に加え、機能している遺伝子を網羅的に検出するトランスクリプトーム解析や生化学実験などを用いた多角的な研究により、本種が光合成を止めた後も葉緑体での物質生産を維持しつつ、周りの養分を効率よく獲得するための能力を増大させていることが明らかとなりました。本成果は、2022年4月29日 に米国の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20220430.pdf

Ryoma Kamikawa, Takako Mochizuki, Mika Sakamoto, Yasuhiro Tanizawa, Takuro Nakayama, Ryo Onuma, Ugo Cenci, Daniel Moog, Samuel Speak, Krisztina Sarkozi, Andrew Toseland, Cock van Oosterhout, Kaori Oyama, Misako Kato, Keitaro Kume, Motoki Kayama, Tomonori Azuma, Ken-ichiro Ishii, Hideaki Miyashita, Bernard Henrissat, Vincent Lombard, Joe Win, Sophien Kamoun, Yuichiro Kashiyama, Shigeki Mayama, Shin-ya Miyagishima, Goro Tanifuji, Thomas Mock, Yasukazu Nakamura, Genome evolution of a non-parasitic secondary heterotroph, the diatom Nitzschia putrida, Science Advances (2022) 8, eabi5075 DOI:10.1126/sciadv.abi5075
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