2022年度「先進ゲノム支援」支援課題の公募要項
ゲノム科学においては、DNAシーケンシング技術のみならず、最先端技術を駆使した新たな解析手法が進展しています。ヒトや動物、植物から微生物に至る様々な生物種を対象とするライフサイエンス研究においては、これら技術を活用することが必須になっています。先進ゲノム支援では、最先端のゲノム解析及び情報解析技術を開発・整備し、多様な科研費課題に提供して支援することにより、我が国のゲノム科学ひいては生命科学のピーク作りとすそ野拡大を進めることを使命としています。本公募はそのような支援に相応しい科研費課題を募るものです。
1支援公募にあたっての方針
先進ゲノム支援では、ゲノム科学の発展に資する支援課題を、文部科学省科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)の助成課題を対象に、種目・分野を問わず広く募集します。支援課題の募集に際しては、特に以下の点を重視しており、これらに該当する課題の応募を期待しています。
- 科研費研究課題を拡張することでさらなる発展が期待できる課題
- 高度な技術が要求されるチャレンジングな課題
- 他の受託解析サービス等ではできない解析を必要とする研究課題
また、女性研究者および若手研究者、ゲノム科学研究を新たに開始する研究者からの応募を期待します。審査の結果が同程度の場合、これらの応募課題及びこれまで「先進ゲノム支援」による支援を受けていない研究者による課題を優先的に選定します。
なお、支援経費は先進ゲノム支援で負担しますが、できるだけ多くの支援をするために支援依頼者に一部実費負担をお願いする場合があります。
2支援の対象
2022年度に文部科学省・科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)の助成を受けている研究課題(2022年度新規・継続課題)に基づく申請を対象とします。
3支援できる内容
次世代シーケンサーやシングルセル解析装置を駆使した多様な技術による支援を実施します。
支援技術一覧:
支援解析機器類等:
- DNAシーケンサー(ショートリード):Illumina NovaSeq6000、HiSeq2500、MiSeq、iSeqなど
- DNAシーケンサー(ロングリード):PacBio Sequel/Sequel2、Nanopore MinION/GridION/PromethION、MGI T7/G400など
- シングルセル解析:10X Genomics Chromium、Standard BioTools (Fluidigm) C1 Systemなど
- 空間的オミックス解析:10X Genomics VISIUM、PhenoCycler(CODEX)
補足事項:
- ヒトのゲノムワイド関連解析(GWAS)は支援対象外とします。
- サンガー法による配列決定およびfosmid等クローンライブラリ作製単独の支援は対象外としますが、協議の過程において全ゲノム解析に必要であると判断された場合は支援対象とします。
- 組換え生物の解析試料は必ずDNA等の形で送付いただきます。組換え生物そのものの授受を必要とする支援は原則として対象外とします。
- HeLa細胞のWGSと1000ゲノムの検体を使用したPIGI解析(WGS、WES、全ゲノムのSNPアレイ)は、シーケンスデータのdbGAP への登録が必須となっておりJGAへの登録ができないことから、支援することができません。(参考:5. 支援により得られたデータの公開、共有)
4支援対象課題の選定
支援課題の選定は、「先進ゲノム支援」領域外の専門家から構成される支援審査委員会で行います。
審査の要点:
- 科研費課題の当初計画と密接に関連したものであるか
- 科研費課題の計画そのものの支援ではなく、支援により当該計画を上回る重要な研究成果を得ることが期待できるか
- 受託解析サービス等の利用ではなく、本支援活動による支援が必要であるか
- ゲノム科学としての先進性があるか
- 技術的および必要経費面で支援が実行可能か
支援対象課題選定の方法:
- 支援審査委員会が、書面により審査を行い、支援候補課題のヒアリング調査を受けて、合議により支援対象課題を選定します。申請時に審査を希望する対象区分および主要技術区分を記入して頂き、審査は原則として希望される各対象区分と主要技術区分の組み合わせごとに行います。ただし、申請内容から判断し、審査上より適切な区分へ移動させる場合があります。
対象区分:
- ヒト、動物1(マウス)、動物2(マウス以外)、植物、微生物、情報
主要技術区分:
補足事項:
- ゲノム科学としての先進性については、特にシングルセル解析では、単なる細胞クラスタリング等では先進性が乏しいと判断されます。シングルセル解析により得られた結果を活用して新規知見を見出す具体的な計画が求められます。
- シーケンシングを伴わない情報解析支援を希望される場合は、対象区分「情報」に申請して下さい。対象区分「情報」では、ご自身で所有されているシーケンスデータ等を対象とした情報解析支援を想定しています。支援側が提供できない技術を必要とする場合など、支援をお断りすることもあります。
- 応募数等の状況により、他区分と合わせての審査となることがあります。
- ヒト由来試料を対象とする課題については、倫理審査状況も含めて選考します。所属機関の倫理審査委員会に今後申請する研究課題の場合は、申請予定の書類を添付することで「先進ゲノム支援」への支援申請が可能です。
- 解析試料が他国由来の遺伝資源(動物、植物、微生物及びその一部(DNA抽出物含む))である場合、生物多様性条約及び名古屋議定書に基づく規制等により支援できない場合がありますので、確認のため申請時に関係情報の入力をお願いします。詳細は国立遺伝学研究所ABS学術対策チームのホームページを参照ください。
- 支援申請にあたっては必ず2022年度支援申請書様式を使用してください。
- 支援の対象に選ばれた課題については、申請者の氏名、所属、申請の基の科研費課題名を「先進ゲノム支援」のホームページから公開します。
- 支援課題の選定の過程で提供された情報は選定目的のみに使用します。
- 審査委員の氏名は、翌年度に公表します。
5支援により得られたデータの公開、共有
- 支援活動により得られた解析結果は、論文・データベースなど適切な方法で公表してください。
- 個人ゲノム情報を含まない塩基配列データは、支援依頼者に提供すると同時に、DDBJ(DNA Databank of Japan、https://www.ddbj.nig.ac.jp/index.html)あるいはDDBJが運用するDRA(DDBJ Sequence Read Archive; https://www.ddbj.nig.ac.jp/dra/index.html)(次世代シーケンサーのデータ)に仮登録します。そして、論文発表後は直ちに、未発表の場合は事前に協議した時期(支援終了後原則として1年以内)に公開することとします。
- 個人ゲノム情報についても、その性質に応じた適切な個人情報の保護の仕組みの下で、研究コミュニティでの共有を図ります。統計値など個人の識別可能でない情報は一般公開として広く研究者に提供し、識別可能な情報は審査を経て承認された研究者において共有します(後者を「制限公開データ」と呼びます。共有は論文発表後など一定期間後になります。)。これらのデータの公開・共有は、NBDC事業推進部(https://biosciencedbc.jp/)内のNBDCヒトデータベース(https://humandbs.biosciencedbc.jp/)を通して行います。
6支援申請にあたりご留意頂きたい点
支援内容について:
- 不必要に過大な内容の申請は避けてください。支援活動に配分された経費には限りがあり、希望のすべてに応えることはできません。少しでも多くの課題を支援するために、依頼内容の一部変更や、依頼者に消耗品などの一部負担をお願いすることがあります。
- 選考時に決定した支援内容を超える追加解析が必要となった場合は、原則として支援依頼者の実費負担とします。
- シングルセル解析はコストと手間がかかりますので、単なる細胞クラスタリング等ではなく、シングルセル解析により得られた結果を活用して新規知見を見出す計画が求められます。
解析試料について:
- 「先進ゲノム支援」の活動は年度単位ですので、支援依頼内容は単年度で実施可能なものとなるようにしてください。8月の採択決定後、12月までに試料を提供して下さい。これを過ぎると原則として支援が出来ません。ヒト遺伝子解析研究など倫理委員会等における承認手続きが必要な場合は、10月末までに承認を得た上で速やかにサンプルを提供して下さい。
- 支援を担当するシーケンス拠点に試料を送付する際に、データ登録に必要なサンプルメタデータも併せて提出して頂きます。メタデータの提出が無い場合は支援ができません。
- 配列決定に用いるDNA試料の調製は、原則として支援依頼者側で実施していただきます。解析に必要なDNA量とその質については、支援担当グループと協議していただきます。送付された試料が量的、質的に解析に不向きな場合には、中止、再調製等について支援担当グループと協議することとします。
- RNA-Seq解析のためのRNA調製は、原則として依頼者側で実施していただきます。その後の、配列解析のための前処理については、支援担当グループと協議していただきます。なお、期待される転写産物が含まれていることのreal time RT-PCR による確認などの、基礎的検討もお願いすることがあります。
支援の形態について:
- 支援活動は、支援依頼者と支援担当者の共同作業として進めますので、具体的な支援の進め方は、担当者との協議により決定します。
- 支援担当者の貢献の度合いにより、共著者とする共同研究の形や謝辞に記載する形等、必要に応じ事務局も交えて協議の上、適切な対応をお願いします。
- 高度かつチャレンジングな課題については、申請者との協働作業が必須ですので、基本的に支援担当者との共同研究として進めたいと考えます。
- 本支援活動では情報解析人材育成が特に重要視されています。また情報解析は多大な手間がかかりますので、情報解析支援メンバーによる支援は共同研究の形でお願いします。
- 高度な解析アルゴリズムや解析ソフトウェアの開発研究のため、本支援プラットフォームの情報解析グループとのデータ共有をお願いすることがあります。
- 支援決定後は倫理申請面に関する支援もおこないます。
成果発表について:
- 支援結果を含む論文等の成果を発表された場合は、速やかに支援事務局までご連絡下さい。また事務局では定期的に成果の発表状況調査を実施します。
- 論文発表に際しては、「先進ゲノム支援」の支援を受けている事を記載して下さい。「先進ゲノム支援」の英語表記は、JSPS KAKENHI Grant Number 22H04925 (PAGS)です。
- 支援依頼者には、支援を受けた課題についての成果報告書の提出を毎年度お願いしています。
免責事項:
- 支援活動の実施は、不慮の事故も含め成功を保証するものではありません。また、当初に期待した質・レベルのデータおよび解析結果が得られない場合があることをご了解下さい。
- 支援グループから提供するデータ等については、最善を尽くしますが、不備があるかもしれませんので、使用前に必ず支援依頼者側で内容の確認をされるようお願いします。
- 支援側の原因による場合以外の解析やり直しは依頼者の実費負担とします。
7募集期間
2022年度支援課題の募集期間:
2022年5月17日(火)から 6月14日(火)正午まで
8支援の開始時期
2022年9月上旬頃
- 公募締め切り後、審査委員会によって候補課題を選定し、支援実施担当者による候補課題の支援内容の詳細の聞き取りと協議(ヒアリングと呼んでいます)を行い、審査委員会においてそれらの結果を合わせて8月下旬頃までに支援課題と支援内容を最終決定する予定です。これ以降、支援実施担当者と打ち合わせに基づき支援を開始します。
2022年度支援申請書
- 2022年度支援申請書様式(一式)
+2022「先進ゲノム支援」支援申請書様式(word)
+(入力準備用)2022web申請システム入力項目一覧(excel) - 倫理関連書類チェックシート(docx)
申請に際して
支援申請の流れ
研究者登録(初めて申請をする方)
- 01公募要項の確認・同意
- 02申請用研究者情報入力
- 03本人確認Eメール送信、Eメール記載のURLクリック※URLの有効期間は72時間です。72時間以内にクリックして下さい。
- 04Eメールでパスワード送付
※パスワードを忘れた方は再発行が可能です。
支援申請(研究者登録が完了している方)
初めての方はこちらをご覧ください- 05申請システムログイン
- 06「支援申請書」様式のダウンロードヒトゲノム関連研究の場合
「倫理関連書類チェックシート」(doc)、
「説明同意文書の雛形」(doc)、
「記載すべき項目リスト」(xls)
のダウンロード - 07「支援申請書」の作成(PDF形式で保存)ヒトゲノム関連研究の場合
「倫理関連書類チェックシート」
「倫理審査委員会審査資料」
の作成(PDF形式で保存) - 08申請システムから研究費の情報、希望する支援技術の入力
- 09「支援申請書」「倫理審査委員会審査資料」(PDF形式)のアップロード
- 10受付完了Eメール送信
※期間中は何度でも修正が可能
支援申請からデータ提供までの流れ
- STEP.01
- 支援申請
- …研究者登録・支援申請
- STEP.02
- 外部委員による書面審査
- STEP.03
- 審査委員会
- …採択候補課題の選定
- STEP.04
- ヒアリング案内通知
- 申請締切より約1か月半程度
- STEP.05
- ヒアリング
- …支援内容詳細の聞き取りと協議
- STEP.06
- 審査委員会
- …採択課題の決定
- STEP.07
- 採択通知
- 申請締切より約2か月半程度
- STEP.08
- 倫理手続き (対象課題のみ)
- STEP.09
- 試料およびメタデータ送付
- STEP.10
- シーケンスデータ取得
- STEP.11
- DBへのデータ登録、依頼者へのデータ提供
- (支援希望者対象)情報解析支援
- (必要に応じて)論文化にむけての助言、協議
- STEP.12
- 論文等成果報告