[班員による高度化論文公開]遺伝子の転写開始点の検出法TSS-seq2を開発 ―メッセンジャーRNAの5’末端を高い特異性で検出―
東京大学大学院新領域創成科学研究科の関真秀特任准教授と鈴木穣教授、京都大学大学院理学研究科の松下智直教授と野田口理孝教授(兼:名古屋大学生物機能利用開発研究センター 特任教授)、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の吉田聡子教授、筑波大学生命環境系の壽崎拓哉准教授、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの黒谷賢一特任准教授らの研究グループは、ゲノムDNAから遺伝子を読み取る開始位置である転写開始点(TSS)を網羅的に決定するTSS-seq2法を開発しました。さらに、コシオガマ、ベンサミアナタバコ、ミヤコグサ、ハクサンハタザオの4種類の植物について、TSS情報の収集を行いました。
TSSの決定は、RNAの正確な構造や、TSSの近辺に存在して遺伝子の機能を調節する重要な領域であるプロモーター領域を同定するために重要です。正確性の高い転写開始点検出法は、必要なRNAの量が多く、プロトコルが複雑であるなど、簡単には実施できない手法が主流でした。今回、先行研究により開発されたTSS-seq(注1)を改良・簡略化することで、TSS-seq2を開発しました。TSS-seq2は既存の方法よりも特異的に転写開始点を検出でき、5ナノグラムと少量のRNAからでも実施できます。
今回開発した方法は、様々な生物種や組織でのmRNAの正確な構造の同定や遺伝子の制御の研究、特に、希少な細胞種や微小な組織などの少量のサンプルの解析への応用が期待されます。また、今回収集した植物のTSS情報は、これらの植物種の研究の基盤データとなることが期待されます。
本成果は、Nucleic Acids Researchに2023年11月22日に掲載されました。
プレスリリース: https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10636.html