[班員による高度化論文公開]肺腺がんの進展に伴い変化するがん微小環境とは?―空間オミクス解析技術によるがん組織局所の分子イベントの解明―
東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木絢子准教授および鈴木穣教授らのグループは、筑波大学および国立がん研究センターとの共同研究において、空間オミクス解析技術を駆使して、肺腺がんが周囲の環境とのやり取りを通じて進行していく様子を評価しました。
がん細胞とその周囲の環境との相互作用は、がんの進行において重要な要素だと考えられています。しかしながら、がん細胞と周囲の環境との相互作用など、がんの進行中に変化を引き起こす事象について、分かっていない部分は多くあります。
今回、研究グループは肺腺がんが進行する際の周囲の環境との相互作用を詳細に解析しました。複数の空間オミクス技術を組み合わせることで、肺腺がんが進行する際の周囲の環境との相互作用を評価しました。その結果、がん細胞が特徴を変える際に、周りの免疫細胞との関係性にも変化が生じることがわかりました。この研究により、肺腺がんが周囲の環境とのやり取りを通じて進行していく様子が明らかになりました。
今後、がん細胞と免疫細胞の相互作用をより正確に理解することで、さまざまなステージにおけるがん治療につながると期待されます。
本成果は、「Nature Communications」に2024年12月6日に掲載されました。
プレスリリース: https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/11318.html
Yuma Takano, Jun Suzuki, Kotaro Nomura, Gento Fujii, Junko Zenkoh, Hitomi Kawai, Yuta Kuze, Yukie Kashima, Satoi Nagasawa, Yuka Nakamura, Motohiro Kojima, Katsuya Tsuchihara, Masahide Seki, Akinori Kanai, Daisuke Matsubara, Takashi Kohno, Masayuki Noguchi, Akihiro Nakaya, Masahiro Tsuboi, Genichiro Ishii, Yutaka Suzuki*, Ayako Suzuki, Spatially resolved gene expression profiling of tumor microenvironment reveals key steps of lung adenocarcinoma development, Nature Communications (2024) DOI:10.1038/s41467-024-54671-7