[先進ゲノム支援成果公開]ユークロマチンは本当に「ほどけて」いるのか?

ヒトのゲノムは、主に「ユークロマチン」「ヘテロクロマチン」の2つの領域に分類できるとされています。これまで長い間、頻繁に遺伝情報の読み出しが行われるユークロマチンは「ほどけて」いる一方、遺伝情報の読み出しが抑えられているヘテロクロマチンは凝縮して「塊」を形成している、と考えられてきました。

今回、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ゲノムダイナミクス研究室の前島一博 教授、飯田史織 総研大生(学振特別研究員 DC2)、島添將誠 総研大生、田村佐知子 テクニカルスタッフ、井手聖 助教は、Trends in Cell Biology誌に、この定説を覆すOpinion Paperを発表しました。この論文では、最近報告された超解像クロマチンイメージング、クロマチンのアクセシビリティをDNA消化酵素に対する感受性でゲノムワイドに調べた解析、さらには、密度勾配遠心法を用いたヌクレオソーム密度のゲノムワイドな解析をもとに、高等真核細胞ではユークロマチンも直径100-300 nm程度の凝縮した「塊 (ドメイン)」を形成していること、凝縮したドメインがクロマチンの基本構造であることを提唱しています。さらに、凝縮したドメインが存在することによって実現する転写制御のモデルや、分裂期染色体でのドメインの役割についても議論しています。本論文は2023年6月27日にTrends in Cell Biology誌に掲載されました。

プレスリリース: https://www.eurekalert.org/news-releases/993484

Kazuhiro Maeshima, Shiori Iida, Masa A. Shimazoe, Sachiko Tamura, Satoru Ide. Is euchromatin really open in the cell?. Trends in Cell Biology (2023). doi: 10.1016/j.tcb.2023.05.007
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