[先進ゲノム支援成果公開]マウス精巣から卵巣への性転換!——胎子精巣内に眠る卵巣前駆細胞の発見——

東京大学大学院農学生命科学研究科獣医解剖学研究室の金井克晃教授率いる研究チームは、AMH-treck トランスジェニック(Tg)マウス系統を用いて、胎子精巣からセルトリ細胞をジフテリア毒素により実験的に除去することで、精巣上皮から顆粒層細胞を含む卵巣皮質が形成され、精巣間質では卵巣特有の内莢膜細胞が出現することを発見した。この精巣から卵巣への性転換は、セルトリ細胞から分泌されるパラクライン因子の供給停止によるものである。今までは、未分化な性腺の雌雄共通の前駆細胞から、オス型のセルトリ細胞、メス型の顆粒層細胞(ステロイドホルモン産生細胞は、オス型のライディッヒ細胞とメス型の内莢膜細胞)が分化し、精巣・卵巣へと発達すると考えられていた。本成果により、オス・メスで別々の前駆細胞から精巣・卵巣が発達し、セルトリ細胞由来のFGF9がメスの卵巣前駆細胞の出現を抑制していることも新たに判明した。胎子期の精巣で卵巣前駆細胞が維持されている事実は、マウスだけでなく、ヒトや家畜の性分化異常症での卵巣前駆細胞の性的2型の破綻の一原因として考えられ、ほ乳類の生殖腺の機能障害の病因の深い理解に貢献する。
本成果は2023年7月17日にDevelopment誌に掲載されました。

プレスリリース: https://release.nikkei.co.jp/attach/658550/02_202307041438.pdf

Kenya Imaimatsu, Ryuji Hiramatsu, Ayako Tomita, Hirotsugu Itabashi, Yoshiakira Kanai. Partial male-to-female reprogramming of mouse fetal testis by sertoli cell ablation. Development (2023). doi:10.1242/dev.201660
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