[先進ゲノム支援成果公開]世界初、アレキサンダー病の進行抑制に関与する細胞を発見
山梨大学 大学院総合研究部 医学域 基礎医学系 薬理学講座及び山梨 GLIA センター小泉修一教授及び齋藤光象助教の研究チームは、これまで知られていなかった、稀少な難治性神経変性疾患である「アレキサンダー病」の病態保護作用に関与する細胞を発見しました。 アレキサンダー病は、本邦の患者数約 50 名の超稀少な難治性神経変性疾患であり、根本的な治療法は確立されていません。アレキサンダー病はグリア細胞の一種である「アストロサイト」特異的遺伝子 GFAP 遺伝子の変異が原因で発症します。しかしながら、同一の GFAP 変異を有していてもアレキサンダー病の発症年齢、重症度、臨床経過には幅広い多様性があることが知られていました。また、ほぼ無症候や軽症での経過中に急な病状進行を見る症例もありGFAP 変異以外もしくはアストロサイト以外の疾患修飾因子の存在が疑われていました。
アレキサンダー病は一次性アストロサイト病であるため、これまでの研究はアストロサイトに注目した研究が殆どでした。しかし今回、もう一つのグリア細胞であるミクログリアが本疾患の重要な修飾細胞であり、病態に大きく影響していることが明らかとなりました。これらは、ミクログリアへの介入が、将来に全く新しいアレキサンダー病の治療戦略になる可能性を示唆するものです。本研究成果は英国オックスフォード大学出版局が刊行する国際医学誌「BRAIN」に2023年11月13日午前9時(日本時間)に掲載されました。
プレスリリース:
https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2023/11/20231113pr.pdf
Kozo Saito, Eiji Shigetomi, Youich Shinozaki, Kenji Kobayashi, Bijay Parajuli, Yuto Kubota, Kent Sakai, Miho Miyakawa, Hiroshi Horiuchi, Junichi Nabekura and Schuichi Koizumi, Microglia sense astrocyte dysfunction and prevent disease progression in an Alexander disease model. BRAIN (2023). doi: 10.1093/brain/awad358