[先進ゲノム支援成果公開]自然界で動物の成長を支える共生微生物叢―中心的な役割を担う共生酵母・細菌の同定―

動物と共生する微生物は宿主の成長に大きな影響を与えます。しかし、多くの共生微生物種がいる中でどの種が重要な役割を担うかはよくわかっていません。また、共生細菌の役割と比べ、共生酵母の役割については不明な点が多く残されています。
 そこで、牟禮あゆみ 生命科学研究科博士課程学生、服部佑佳子 同助教、上村匡 同教授らの研究グループは、野生のショウジョウバエが共生する微生物叢を解析しました。自然界でショウジョウバエは、酵母や細菌によって発酵した果物を食べていますが、これらの微生物が存在することで幼虫が成長できることが知られています。そこで、発酵した果物から単離した微生物種を様々な組み合わせで無菌の幼虫に与えて、食べた幼虫が蛹まで成長できるかを解析しました。その結果、果物の発酵段階によって異なる微生物種が単独、あるいは協力しながら幼虫の成長に中心的な役割を担うことを突き止めました。さらに、特定の酵母種による栄養素供給機構の一端を明らかにしました。本研究の成果は、今後、より多数の種で構成される哺乳類の微生物叢の効果と作用機構を理解する上での足がかりとなることが期待されます。
 本研究成果は、2023年12月27日に、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載されました。

プレスリリース: https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-12-28-0

Ayumi Mure, Yuki Sugiura, Rae Maeda, Kohei Honda, Nozomu Sakurai, Yuuki Takahashi, Masayoshi Watada, Toshihiko Katoh, Aina Gotoh, Yasuhiro Gotoh, Itsuki Taniguchi, Keiji Nakamura, Tetsuya Hayashi, Takane Katayama, Tadashi Uemura, Yukako Hattori. Identification of key yeast species and microbe–microbe interactions impacting larval growth of Drosophila in the wild. eLife 12, (2023). doi:10.7554/elife.90148.3
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