[先進ゲノム支援成果公開]腸内細菌の硫化⽔素合成能の役割を解明−腸内細菌は硫化⽔素を合成することで鉄の取り込みを上昇させる−
東京⼯業⼤学 ⽣命理⼯学院 ⽣命理⼯学系の野々⼭翔太助教、増⽥真⼆教授のグループは、同 科学技術創成研究院 化学⽣命科学研究所の⽥中寛教授、九州⼤学 ⼤学院医学研究院の後藤恭宏助教(現 国⽴遺伝学研究所准教授)、林哲也教授らと共同で、細菌の硫化⽔素(H2S)合成能が鉄(Fe)の取り込み活性の調節に重要であること、ならびにその制御を⽋損すると抗⽣物質耐性が低下することを⾒出した。
多くの腸内細菌は硫化⽔素合成能を持ち、その機能を強化すると細胞内での硫化鉄(FeS)の形成が促され、その結果抗⽣物質耐性が⾼まることが分かっていた。しかしそのメカニズムは不明であった。
今回の研究では、過剰な硫化⽔素合成能を持つ変異体の⼤腸菌を作出し、その株の遺伝⼦発現を解析したところ、細胞への鉄の取り込みに関与する遺伝⼦の発現が上昇していることが分かった。さらにその遺伝⼦発現の上昇には、硫化⽔素センサータンパク質「YgaV」の働きが必要であることを発⾒した。また、YgaV の機能を⽋損させると、鉄取り込み活性が著しく阻害されることを明らかにした。この発⾒により、薬剤耐性を⽣じさせない新たな抗⽣物質の開発につながるものと期待される。
研究成果は2024年9⽉26⽇(現地時間)に「mBio」オンライン版に掲載された。
プレスリリース: https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20240926.pdf
Shouta Nonoyama, Shintaro Maeno, Yasuhiro Gotoh, Ryota Sugimoto, Kan Tanaka,Tetsuya Hayashi and Shinji Masuda, Increased intracellular H2S levels enhances iron uptake in Escherichia coli, mBio (2024). DOI::10.1128/mbio.01991-24