[先進ゲノム支援成果公開]植物の葉細胞が幹細胞に変わる仕組み 〜DNAのたたみ方を段階的に変えるメカニズムの発見〜
基礎生物学研究所および総合研究大学院大学のDe Villiers, Ruan Morné 大学院生(現・特別協力研究員)、長谷部光泰 教授、石川雅樹 助教らの研究チームは、コケ植物ヒメツリガネゴケを用い、細胞ごとの遺伝子の働きとクロマチンのゆるみ具合を同時に解析する最先端手法で、葉の細胞が幹細胞に変化する過程を詳細に調べました。その結果、葉に傷がつくとクロマチンが全体的にゆるみ、次にステミン転写因子が幹細胞化に必要な遺伝子のクロマチンを選んでさらにゆるめ、それらの遺伝子を活性化させることで、葉細胞が幹細胞へと変化することが明らかになりました。つまり、細胞はまず広くクロマチンを緩め、次に必要な遺伝子を選んで開くという、2段階のしくみによって幹細胞化することがわかりました。
ステミンは、シロイヌナズナや農作物にも存在していることから、同様のしくみが他の植物でも働いている可能性があります。今後は、植物ごとの再生能力の違いの理解や、再生しにくい植物でも効率よく再生を促す新たな技術の開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は2025年8月1日に『The Plant Journal』に掲載されました。
プレスリリース:https://www.nibb.ac.jp/press/2025/08/08.html
Ruan Morné de Villiers, Gergo Palfalvi, Akinori Kanai, Yutaka Suzuki, Mitsuyasu Hasebe, Masaki Ishikawa. STEMIN transcription factor drives selective chromatin remodeling for gene activation within a relaxed chromatin during reprogramming in the moss Physcomitrium patens. The Plant Journal 123, (2025). DOI:10.1111/tpj.70386