[先進ゲノム支援成果公開]17年ゼミはどう羽化のタイミングを決めているのか?―野外調査による4年ゲート仮説の検証―
アメリカ東部に生息する周期ゼミ(素数ゼミ)は、 17年または13年の厳密に制御された幼虫期を持ち、地域ごとに複数の種が同調して周期的に発生することで有名です。しかし、その生活環を制御する仕組みは未解明です。
曽田貞滋 理学研究科教授(現:名誉教授)は、昭和医科大学、大阪公立大学、静岡大学、東京科学大学、米国コネチカット大学(University of Connecticut)、米国マウント・セント・ジョセフ大学(Mount St. Joseph University)、米国カリフォルニア大学(University of California)と共同で、周期ゼミの生活史制御に関する「4年ゲート仮説」を検証するために、野外調査で得られた17年ゼミの11歳から17歳までの幼虫の発育成長と、変態過程に関わる遺伝子の発現変動を調べました。この仮説では、周期ゼミの終齢幼虫が羽化を決定する年齢は4の倍数年で、その年(ゲート年)に臨界体重を超えていれば変態を決めて越冬後の翌年春(4の倍数+1年め)に羽化します。調査の結果、白眼から赤眼への変化をともなう成虫変態の決定が、秋までに16歳のほぼ全個体のほか、12歳の体重の重い一部の個体で起こり、仮説どおりに4の倍数年において臨界体重を達成した場合に、翌年春の成虫への変態が決定していることが示唆されました。また、遺伝子の発現変動から、越冬休眠により春まで羽化が持ち越されることが示唆されました。
本研究成果は、2025年8月27日に、国際学術誌「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」にオンライン掲載されました。
プレスリリース:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-08-28-1